1522 いかめしの丸かじり 東海林さだお

 文春文庫81番。シリーズ第32弾。表紙は輪切りになったいかめしと、バンザイをして大口を開けて喜ぶ豚鼻の少年。
 書名こそいかめしが使われているが、実はタコの特集本。「タコぶつ噛み噛み考える」『蛸の足の「しまった」』「蛸さん鍋となる」の三本を収める。

#こんなことを書いても何の共感も得られないことは百も承知で書くのだが、飲み物をストローでチューチュー吸って飲むあの飲み方、ぼく嫌いです。
#格好がみすぼらしいし、仕草が惨めたらしい。
 名文。「飲み物を…」から始まる主題はある程度長いが、主張は「ぼく嫌いです」とぴしっと短く締める。井上ひさしのようだ。「箱物ジュースのチューチュー」より。

#今夜のおかずはタコぶつよ
#ワーイワーイタコぶつだ
#こんな子供いません
 「タコぶつ噛み噛み考える」の挿絵より。ないものを描く想像力。

#どうです、とかくちらかりがちな具をすべて仕舞ってあるではないですか。
#梅干しを仕舞い、鮭を仕舞い、ちらかりがちなおかかもきちんと仕舞ってある。
 「迫力の肉巻きおにぎり」より。おにぎりが具を仕舞う着眼点。(丸かじりシリーズは着眼点が肝(キモ)であるが)

*(アメリカンドッグにソースをかけると)そうすると甘みが気にならなくなり俄然ビールに合うことになる。
#どうもオレ、何でもかんでもビールに持っていこうとする傾向があるな。
#よくないな。
 いつも一人称は「ぼく」なのだが本心を吐露するときは珍しく「オレ」を使う技巧。しかしこういうオチは珍しい。「おいしいよ、アメリカンドッグ」より。

#そう、ゴハン。ゴハンと組み合わせてこそ、レバニラ炒めはその真価を発揮するのだ。
#合うんですねえ、ゴハンと。
#程よく火の通ったレバーの歯ざわりは、ちょっとサクッとしたような、粘りが少しあるような、少し苦いような、血の味も少しして、まさに内蔵の味、滋養の味。
 「着眼点」と並ぶ「口腔内感覚」こそ本シリーズの柱。

#コンニャクがおいしく煮えててよ
 「変わる変わるよおでんは変わる」の挿絵より。シンプルな描線で色気のある美人のイデアを描く。

 解説は小泉武夫。東京農業大学名誉教授。トイレに「ショージ君の漫画文学全集」を置いているのが通だ。この解説に若い漫画家を連れてきて「キャー、尊敬する東海林センセイの解説を書くなんておこがましい」というパターンはもう飽きた。これくらい重さのある人に頼んで欲しい。田崎真也さんのそれなんて最高でしたね。

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1521 トルコから世界を見る 内藤正典

 図書館より。ちくまQブックス。副題、ちがう国の人と生きるには?

 原題は『トルコのものさし 日本のものさし』。三十年近く前に書かれた本に、ちょこちょこ「今では…」という注釈を挟む。もちろんロシアのウクライナ侵略を受けて急きょ出された本だ。ロシア対ウクライナを直接言及するのではなく、あくまでもトルコを背景に、異文化・異民族が接する場所ではどのようなふるまいをすればいいか考える本である。

 意外なことに、トルコの国教はイスラム教ではない。建国の父、アタチュルクがそう決めたからだ。だから国立の大学ではスカーフ(ヒジャブなど顔をおおう物)の着用が禁じられている(私立大学は別)。しかし、イスラム教を信じている人は、着用の自由を求めている。日本人は「顔を隠すことを強制されるなんてかわいそう」と思うかもしれないが、必ずしもそうではないのだ。

*コロナ禍が世界を襲ったとき、いち早くワクチンを開発したのはドイツのビオンテック社だった。ファイザー社製ワクチンの開発元がビオンテックである。この会社を作ったのはウール・シャヒン博士とオズレム・テュレジ博士夫妻。二人とも、トルコからドイツに渡った移民の子である。

#日本企業の経営者たちは、「労働力は確保したい。だけど家族が定住すると子どもの教育問題やら何やらがでてきてやっかいだ。日本人だって単身赴任は珍しくないんだから、外国人労働者にもそうしてもらおうじゃないか」という理屈なのだが、こういう主張は、発展途上国の人びとにとっても、また、すでに外国人労働者を受け入れてきた国からみても、あまりに人権感覚に欠けている。

#「日本人は、なぜいつまでも外国人労働者を受け入れるべきか、受け入れるべきでないか、そんな議論ばかり繰り返しているのですか?」
#「門戸を閉ざしていても、日本にはすでに外国人がはいっているではないですか、なぜ、その現実から出発して、問題を解決しようとしないのでしょう。不思議ですね」
 ベルリンの外国人労働者担当者、バルバラ・ヨーンさん

 ウクライナ戦争で、トルコは「ロシアの侵略には一切正当性がない」と明言した。しかし欧米諸国の制裁には加わらなかった。
#トルコは、二つの国にとって、いわば隣人です。隣人は、近所でたいへんな争いが生じたら、どうするでしょう? 選択肢は二つしかありません。どちらかの味方をするか、どちらの味方もしないかです。戦争は、いつか終わります。一方の味方をすれば、戦争が終わったとき、他方とは二度と関係を元に戻せなくなります。隣同士の国というのは、当然、経済的な結びつきも強く、人の往来も多いものです。それをすべて失うような選択はありえないというのがトルコの判断でした。そして、歴史上、トルコは十数回もロシアと戦争をした経験があります。ロシアが戦争を始めると、いかに残忍で冷酷になるかを最もよく知っているのはトルコなのです。

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1520 脳がほぐれる言語学 金川欣二

 ちくま新書。副題、発想の極意。

 かつて「言語学のお散歩」というホームページがあった。富山商船高専の先生が豊かな教養を背景に笑いを取りに行く贅沢なページだった。かなりの長文だったがぐいぐい読ませる力があった。しかも上にわざと「ホームページ」と書いたが、いかにもIBMビルダーあたりで作ったhtmlファイルに好感が持てたものだ。IBMビルダーかどうかは今となってはわかりません。

 身近な例から初めて、言語学、記号論、人類学、民俗学、映画、ジョークを取り混ぜる手腕は華麗なダンスを見ているかのようだ。

#ルネサンスを作ったメディチ家はMediciの綴りからも分かるようにもともと薬業(medicine「メディチーネ」)で儲け、銀行業などに発展した一家で、一三四八年のペスト流行の頃から頭角を現し始めたという。

#人は思ったほど、自由に、主体的に物事を見ることはできない。文化や言語のフィルターを通してしか見ることができず、「客観的な」世界などない。

#「あなたのことをもっと知りたい」は愛の言葉で、「あなたのことがわかってしまったわ」は別れの言葉だ。

作家の落合恵子氏がDJ時代に「レモンちゃん」と呼ばれたように日本ではさわやかさ、清純さの象徴のレモンだが、英語ではすっぱさを重視して「口をすぼませて顔をしかめさせるもの」から欠陥車など悪い意味に使う。

#「セントルイスブルース」だって、初代・林家木久蔵(木久扇)のおかげで「いやん、ばかん」にしか聞こえなくなる。

*イグノーベル賞は、反語的な意味合いの接頭辞を加えたもじりであると共に、「卑劣な、あさましい」を意味する"ignoble"と掛けている。

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体重80.1kg 22.0%・ウヰスキー580

月) 納豆豆腐 ランチ さば大葉フライ サラダ 鰹たたき まぐろたたき巻 さつまいも天 肉まん
火) 納豆豆腐 ランチ サラダ ポーシャ弁当(ごはん、ナゲット、玉子焼き) 旨辛仕立ての揚げ鶏 ミニ豚串カツ 海老蟹帆立香るポタージュパイ パンピザ
水) 納豆豆腐 ランチ サラダ 気仙沼産牡蠣オイスターソース春巻き 厚切りハムカツ ピザパン
木) 納豆豆腐 ランチ 海老天 メバチマグロ 肉まん よだれ鶏
金) 納豆豆腐 ランチ 今川焼 サラダ わかさぎ唐揚げ 肉まん 十菜煮物盛合せ 
土) 納豆豆腐 ジャワカレー(ハチ) サラダ カツオ刺身 ポーシャ弁当(ごはん、玉子焼き、里芋、きんぴらごぼう、肉団子) 唐揚げ
日) 納豆豆腐 かき揚げ玉子もやし丼 サラダ 焼きししゃも パンの耳 豚ロース串カツ かにクリームコロッケ ピザ バゴーン

 スージーから期限切れのパン、六枚切りのうち二切れをもらった。持て余したのでピンポン玉の大きさにちぎってピザに乗せて食べた。お腹いっぱい。
 ポーシャはお弁当を食べれ。ママのお弁当はあと一ヶ月くらいですよ(ここに書いても伝わらない)。直接言う練習。
 よだれ鶏のたれは自分では買わないから、クルマ屋の福袋かな。茹でるだけなので簡単。

 週末恒例の唐揚げやピザを残してしまう。特に日曜日はピザを食べている途中でバゴーンを食べたくなって作った(スープまで飲んだ)。ルーチンに飽きたか。
 焼きそばバゴーンは東北と信越地方でしか売られていないとのこと。おいしいのでほかの地方の皆さんにもおすすめします。アマゾンの評価も笑うほど高い。

 日曜日はご飯を食べるためにかき揚げを買ってきた。卵を溶いて、焼いて、もやしとかき揚げを乗せて海苔をかけ、醤油を垂らしたらおいしいかなと思ったら、もやしが食べづらかった。カツ丼みたいなのを目指したのに玉子が固くなったのも誤算。

体重80.9kg 22.3% +1.5
体重80.4kg 20.6% -0.5
体重81.3kg 16.3% +0.9
体重81.1kg 20.9% -0.2
体重80.1kg 22.0% -1.0

 よくできました。土日ごはんだったけれど関係ない。

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 ウヰスキー空けた。4㍑の8(本目。まあそのくらいでありましょう)。580本。

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週末の過ごし方20230129(ラジコ・トイレ時計・シューポリッシュ)

 金曜日。事情があって(それも変だが)定時退社。それでもポーシャは20時なのでそれから晩酌。10年に一度の大寒波なので「おうち呑み名人」を起動してわかさぎ唐揚げを焼いて食べる。

 土曜日。ラン。ラジコ「あ、安部礼司」はおしつよしとまりやアンジュの回。いけすぎてるよしの「シェリー」の曲が流れると笑ってしまう。いけすぎはひたち野なつととデートしたはいいが、つい割り勘にしてしまう。
 水槽の水の出がわるいので掃除。
 ショートブーツは合皮でできているのではがれてくる。セリアのシューポリッシュを塗ってごまかす。

 日曜日。ラン。ラジコ「スナックラジオ」は「鬼に金棒で作文」は台本が狙いすぎ。バービーの初めてがエヴァンゲリオンで爆笑。「~(する)ぞ」四連続。
 図書館。
 眼鏡屋へ。右のつるが頭にかからない。「(テンプルの)右が開いていますね」とずばり当てられる。どうしてこう眼鏡屋は完璧に調整できるのだろう。自分もできるようになりたい。
 ずっと使ってきたトイレの時計が壊れた。ワッツウィズで小さな時計を買う。丸七株式会社のRE-02C、スタンド時計ナチュラル。それとボタン電池CR2032、マッスルペンタゴン用。ガソリン、灯油。
 午後は雑文を書く。始めはニコニコ動画で「jazz」を検索してアート・ブレイキーを聞いていたが、高橋幸宏さんを思い出してYMO巡り。
 ポーシャの第二希望のS大学のホテルを探す。学生プランがある(学生証を提示する)。全国呂曠支援(三国志をプレイしているから)、いや全国旅行支援を使うと2,000円割引になる。三回目のワクチンを接種した証明が必要。

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週刊ポーシャ20230128

 月曜日。ポーシャが受けたい三つの大学の、出願期間、試験日、合格発表、手続期間を調べる。やはり三つすべてしなければいけない。落ちたら追加、なんて「継ぎ足し」はできない日程になっている。第一希望と第二の出願は始まっているので"出願する?"と聞いたが「あとで」。出願はネットでマイページを作って行なう。ポイントがつくかな(つきません)。

 火曜日。テレビは"十年で最強の寒波"なんて言っている。会社では蛍光灯が何度も消えたり、ストーブを再起動したりすることがあった。19時ころ着。「停電はなかった。暖房はスチームだから大丈夫。授業は世界史に出て、英語がリスニングだからお願いして出席した。二次試験に関係ない授業には出ないシステム。学割は家にある(忘れたのでJRでタフス大学に行く切符は買わない)。明日はJRが動かないから出席停止になる。休もう」

 私の高校の同じ期間の話をした。午前で勉強を終わり、友達と喫茶店に行ってピザを食べた。タバスコをいうものを初めて見た。"これ辛い""もっとかけろ"と盛り上がった。勉強を一生懸命したはずだが、覚えていない。という話をしたらポーシャは笑った。少しでもリラックスしてくれたらいいな。

 水曜日。"十年に一度の最強寒波”のため、前日に学校からメールが来た。"電車がないなど交通手段がないときは、無理して登校しないでください" 暗に欠席(出停)を勧めている。ポーシャは家にいる。私も早く帰ることができたので一緒に駅へ。まず乗車券。学割を使う方法がわからない。オペレータさんに電話。やはり学割はオペレータさんと話をするほかない(書いておけばいいのに)。えきねっとで予約しておいた新幹線こまちの切符を受け取る。これは"ネット予約の受け取り"と書いてある緑色のボタンがある。QRコードで格好よく発券したい。スマホのメールでQRコードを表示できない。自宅PCではできたのに。結局数字を打つ。

 帰宅。その勢いでタフス大学に出願する。個人情報。証明写真。学部学科。共通テストコード(番号)。"自主性の評価" 「えーっ」と声を上げる。"合格判定ラインの受験生を選抜するときの材料となります" 「待って待って」 "学生時代力を入れたこと"や"大学で意欲を持っていること"のチェックボックスが並び、200文字以内の文章記述がある。「合格判定ラインの受験生って…」 狼狽するポーシャ。こんな彼女は見たことがない。「明日! 明日にする」 先生に相談することにする。
 第二希望のS大学は、センターで受けた教科科目の確認に時間を使っただけで、そんな難しいこともなく、出願完了。18,900円。

 木曜日。中学校の給食の話。放送で食べ物クイズが出た。いただきますのときにクイズが出題される学校には「早く食べたいじゃん!」。三年間ワゴンを使えなかった。給食室に遠いCDE組はワゴンで食べ物を運ぶが、近いAB組は手で運んだ。ワゴンを押してみたかった。
 授業は六校時の英語リスニングだけ。図書館での自習時間でタフス大学の主体性の作文を書いた。昨日の出願を続ける。クレジットカードで20,650円を支払う。英語の外部試験の分、S大学よりちょっと高い。入学志願票に証明写真があるので「私の顔がいっぱい」と笑う。

 金曜日。20:07電車で帰る。テストだった。判定も順位も出ないテスト。何のため? 「緊張感を醸し出すため」 二次試験は科目が別々になるが、どうなるの。「私は一橋大学のグループに入れられた」 おお。国立文系ナンバー3の学校だ。「一橋の英語は簡単だった」 タフス大学の過去問で勉強しているから。「英語は東大や東北大のほうが難しい」「明日は世界史を二時間受けるために学校に行く」「出願状況サイトがあるのだけれど、もう定員に達していた」「ロシア語は二人だった」 ロシア語科に入って転科すれば。「できないよ」 

 土曜日。午前に世界史の試験を受けて12:57の電車で帰る。願書を今日出す? 「うん」 着替えないでお昼を食べる。
 「Youは何しに日本へ」を見る。オーストラリアの女の子が(自国では作物を食べる害獣の)兎をずっと抱っこして離れられない。「かわいい」
 スージーが“兎はかわいいと思っていたけれど、友達が飼っているので兎小屋に入ったら、臭くて兎は駄目だと思った”。
 動きがないので3時ころ封筒を持って行って促す。郵便局は5時までだ。封筒に宛名票を貼る。「曲がったあ」と声を上げる。「行」を御中に直すとき、斜線なのか二重線なのかスージーが考える。さらにスージーは裏に自分の住所名前を書くのが常識だと教える。

「じゅけん票をいれます」
「ちょうさ書をいれます」
「念をおくります」
三人:「合格ぅ~合格ぅ~」「受かれぇ~受かれぇ~」
 ファミリーコントである。二校あるので念の儀式は二度行なわれた。

「調査書、見たいな」 厳封されている。
「調査書って合否には影響しないんだよ。合格してから開けられるんだって」 高校の先生、不憫です。実力一本勝負。
 4時42分郵便局到着。“締切まで余裕がありますか”と郵便局員の女性。今日の閉店にはぎりぎりだった。「簡易書留の速達でお願いします」 よく言えました。700円かける二通。
 書留だから送った記録が残る。ほら、と見せると大学名をスキャンした画像を見て「ふうん」と感心している。「これ、もらっていい?」

「ママが大判焼きが食べたいって」 郵便局の近くに昔ながらの店がある。「あんこだけかな」 あんこだけだった。「四つください」 一個180円。“大判焼きのはじっこ”という紙袋がある。“おいしいよ”と店のおばあちゃん。一つもらう。
「あ、ハムフライだ」 精肉店の前を通る。せっかくなので購入。三個で360円。昔ながらの店なのにクレジットカードが使えるのが意外だ(現金で支払ってしまった)。
 そのままマックスバリュで惣菜や半額になったマグロ、合格応援お菓子を買う。受験突破サッポロポテト、めで鯛ベビースターラーメン、カナエルコーン(招き猫風キャラメルコーン)。大館アメッコ市のミックスの袋がある。小さい袋に色とりどりの飴が入っていて、「かわいい」。
 いつまでも「かわいい」が周りにありますように。

 ほっとしたのか久しぶりにピアノに向かう。「悲愴」第二楽章を弾いていたが「飽きた」とカーペンターズの「Close to You」を弾く。そして「未来予想図Ⅱ」。中学校の合唱コンクールの楽譜がまだあった。色画用紙に楽譜を糊で貼った。卒業の歌も。「コスモス」「流浪の民」「地球星歌」。


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1519 アラビア遊牧民 本多勝一

 図書館リユース文庫。ただであげるというサービス。朝日文庫。裏表紙にはブックオフの105円の値札が貼られている。

 あれは小学校だったか中学校だったか、国語の授業でアラビアについての比較文化の文章を読んだ。アラブにはラクダを表す単語が何十もあるとか、一次名詞と二次名詞の違いとか。しかし衝撃的な話はこれだ。ホテルの部屋を借りたが、鍵が合わない。丸く収めようと笑顔で「鍵が違いましたよ」とフロントに伝えたら。
「あなたが違う部屋番号を言ったのです」
 国語の授業なんて、善人とわかりやすい悪役しか登場しないと思っていたら、素でこんな人がいるのか。アラブ恐るべし。

 そして数十年後、原典を手に入れた。エスキモーやニューギニアの社会に入り込み、厳しい自然に耐え、住民の懐に飛び込む技術と胆力のある著者が、悪戦苦闘しているのがおもしろい。初日だけは社交的に「これもあれも食べろ」と接待されるが、それからはひたすらほぞをかむ思い。物は取られ、クルマは勝手に使われ、代金はふっかけられる。夜に寝っ転がって見る星空だけがなぐさめだ。

 解説は桑原武夫。著者が「桑原には思考の方法を学んだ」という京都大学の先輩であるが、桑原が「今回の取材は大変だったねえ」とねぎらっているように感じられて(さすがにそうは言っていない)ほほえましい。

#クウェート市の場合、昔は冬わずかに降る雨を屋根から集めたり、木造の“木のタンカー”でユーフラテス川の水を運んだりしていたが、石油生産にともなう急激な人口増加で、そんなことではとうてい間に合わなくなったため、一九五一年、ついに海水を蒸留する大工場を建設した。

#公然たる奴隷制度の国は世界でサウジアラビアが最後となっていたが、三年前から廃止されたため、今はベドウィンも使っていないようだ。奴隷といっても、貧困な自由人より豊かな暮らしをしていた者が多かったので、開放されたときは行き場がなくて困ったそうだ。結局月給取りとなってもとの主人のところに残ることが多い。奴隷もサラリーマンも本質的に同じだという証明でもある。
 アルスラーン戦記にこういう話があったね。

#だが、感情としては、早く切り上げたい気持でいっぱいだ。『カナダ=エスキモー』のイスマタたちや、『ニューギニア高地人』のヤゲンブラなどの名は、私たちだけではなく、読者もまた懐かしく思い出すことができるに違いない。だがアブヒダードのベドウィンと別れる今、私たちは「懐かしく思い出しうる」ような人間を、ついに発見することができなかった。

#驚くべき違った人間とは、正確には「驚くべき違ったカルチュア」であって、その違うカルチュアの中に、それなりの偉大な人格や卑小な人格があるのだ。
 たまたまわるい人たちに当たったわけではない、と言っている。

#『アラビア遊牧民』は、本多独特の家庭密着戦術がとれないためもあって、人間の幸福がみずみずしく描けていないつらさがある。
 桑原武夫の評。

 アラビアの砂漠地帯では水や食料が乏しい厳しい生活を強いられるので、簡単に責任を認めて謝ったり、感謝の言葉を述べてはいけない、ということらしい。

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1518 バカと無知 橘玲

 図書館より。新潮新書。副題、人間、この不都合な生きもの。

 心理学の目から差別や陰謀論など社会のあり様を語る。細かい章に分かれているのは週刊新潮の連載だから。
 ヒトは高度に社会性を高めた生き物なので、集団から外れて生きてはいけない。だから協調する。だが自分の遺伝子を残さないといけないので、競争する。あるときは協調し、あるときは競争する。この矛盾を解決するために、ヒトは陰謀を駆使するというのだ。
 書名はダニング=クルーガー効果より。
*能力の低い者は、自分の能力が低いことを正しく認識できない

*近年の脳科学では、「下方比較」では報酬を感じる脳の部位が、「上方比較」では損失を感じる脳の部位が活性化することがわかった。
 だから自分より劣った人を叩くのは気持ちがいい。メディアが芸能人の不道徳をしつこく報じるのはこれだ。

*集合知を実現するには、一定以上の能力を持つ者だけで話し合うこと。それが無理な場合は話し合いをあきらめて、優秀な個人の判断に従ったほうがよい選択ができる。これはある種の貴族政だ。

#自尊心は原因でなく結果

 IAT、潜在連合テストが面白い。「赤」と「夕日」は同じカテゴリーなのですぐに反応できる。「赤」と「海」は時間がかかる。では「黒人」と「銃」ではどうか。このようにして人の無意識を計測することができる。

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1517 兄弟姉妹の心理学 根本裕幸

 図書館より。WAVE出版。副題、弟がいる姉はなぜ幸せになれないのか。

 兄×妹、姉×弟などきょうだいの組み合わせでなりがちな性格を解説する。
 第一子は愛情をかけられ期待に応えようとする。弟や妹は親の愛情獲得レースで不利なので自分の道を探す。三人きょうだいの真ん中、中間子は自由に振る舞い家を出ていきがち。
 そしてその傾向を仕事に生かす。兄姉はリーダーとしての振る舞いに慣れている。弟妹は裏方として根回しが得意。

 ちなみに副題の答えは、姉は弟を召使いとして扱うのに慣れているので、恋人に対しても上からの目線で振る舞ってしまうから。

#下の子は母親が一番なので、どこに行くにも母親が抱っこ。そして、父親が上の子を抱っこしたり、手をつないで歩いたりすることになるのではないでしょうか。

#家族の中にある「5つの役割」
#ヒーロー/ヒロイン
#犠牲者
#傍観者
#問題児
#チャーマー
 チャーマーとはピエロ。愛され、癒やしを与える存在。家族だけでなくて職場にもこの5つの役割があるらしい。


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1516 ハーレムの闘う本屋 ヴォーンダ・ミショー・ネルソン

 図書館より。あすなろ書房。訳・原田勝。副題、ルイス・ミショーの生涯。2016年読書感想文高校の部課題図書。

 「黒人には知識が必要だ」とハーレムに黒人についての本だけを売る書店を開き、公民権運動を支えた男の生涯。
 この本の中身は、発言やインタビュー、記事の断片という画期的な構造をしている。あとがきでは架空の人物もいるとわかるが、読書中はリアルさに圧倒される。
 ミショーは子供のころは盗みを働く問題児で、教会の牧師である兄からは問題視されていた。それでも父親から受け継いだ商才と弁舌で食いつなぐ。兄が黒人に農業という色を与えようと事業を始めたときに、彼は気づく。

#この募集の仕事を通じて、わたしは多くの黒人たちと接したが、残念ながら、自分たちの歴史をちゃんと知っているものはごくわずかだった。自分がどこから来たのか知らなければ、どこへ行こうとしているのかがわからない。
#自分が何者かなのか知って初めて、現状を改善できる。

 その本屋は公民権運動家や詩人、新聞記者などのたまり場になった。モハメド・アリもやってきた。マルコムXは店の前で演説を行なった。ミショーはいつしか「教授」と呼ばれるようになった。「ああ、おれは公言する(profess)からな」とうそぶく。店の名前は「ナショナル・メモリアル・アフリカン・ブックストア」。たくさん飾られた看板の一枚には、"THE HOUSE OF COMMON SENSE", "HOME OF PROPER PROPAGANDA"(良識の館、適切なる宣伝活動の拠点)とある。

 マーチン・ルーサー・キング牧師のことはよく思っていない。黒人を雇わない本屋でサイン会をしたことに怒っている。
#わたしは20年も前から、ハーレム随一の書店を経営しているのに、キングも、キングの本を出している出版社も、わたしに会いに来ようともしない。
#キングは素晴らしい活動方針をもっているし、口にする言葉は洗練されている。でも、教養がありすぎて、ポケットに辞書を入れておいて調べないと、なにを言っているのか、ふつうの人にはさっぱりわからない。

#わたしはいつもキングの意見に賛成してきたわけじゃないが、でも、キングが、正義のために闘う兵士として、それなりの役目を果たしたことはまちがいない。われわれ黒人の中から声の大きなやつを排除してしまえば、あとの連中はすごすご引きさがると思っているやつらがいる。でも、そうはいかない。また、だれかが声をあげ、武器を研ぎ、闘いに加わるだろう。わたしは暴力を好まない。言葉を武器に闘っているが、なぜこれほど多くの黒人が怒りにかられているかは理解できる。暴力は天国から始まった。神は敵である悪魔に対して暴力をふるった。神は悪魔を天国から追い出したが、それは暴力だろう。

#切り倒されている時に、だまって立っているのは樹木だけだ。

 読みながら死の雰囲気が横溢していることを感じるのは、なぜだろう。

伝説の書店 その2 ハーレムの黒人専門書店 - 愛書家日誌
 このサイトの説明がすばらしい。

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