ラブ・アクチュアリー
クリスマスを前にしたイギリス人たちの、同時進行恋愛物語。
こういうマルチストーリーものは、絡み具合が命だと思う。
1)ヒュー・グラント演じる英国首相と秘書
2)老いたロックスターとそのマネージャー
3)妻を亡くした義父のドラム少年と(たぶん混血)ボーカル少女
4)アメリカに行けばもてまくりと信じている一直線バカ
5)デザイン会社社長と誘惑悪女と社長の妻
6)ポルノ男優とポルノ女優
7)デザイン会社の地味なOLとハンサムマッチョ
8)英語しか話せない作家とそこに働きに来たポルトガル人ハウスメイド
9)黒人男&白人女とその男の親友であり女に片思いのハンディカム男
あ、書き出してみたら思ったよりあるわ。これを2時間10数分にまとめたのはほめるべきか。
結論から言うと、いいところも悪いところもある映画。
まずいいところから言えば、(9)で"All you need is love"がかかるが、こんなに感動的な演奏を私は知らない。ここだけで涙が出そうだ。本物のレノンはこれをガムを噛みながら歌ったそうなので、やはりこの映画がナンバーワンだ。実際に結婚式でこんなことをやられたら、泣く。格好良すぎる。
(3)のクライマックスの少年が走るところも、べたべただけれどもいいなあ。「映画で感動させるには走ればいい」と『電車男』以来悟ってしまった私であるが、ETみたいで気に食わなかった少年の顔が次第によく見えてくる。
白眉は(8)の求婚シーンだ。台詞はちょっと余計であるが、まったく見ず知らずのお客(と従業員)が、一体になって祝福しているのがいい。決して美人ではない彼女が、きれいに見える。
悪いところ。ああ、このパラグラフを書かなければ波風も立つまいに。
見てはいないのだが、この翻訳は戸田奈津子さんであろう。きっと。
彼女の翻訳は、私のセンスでは下品すぎる。
もちろん、(1)の秘書の言葉遣いは笑わせるところなので問題なし。それ以外で、"fucking"を見たら「クソ」と条件反射で訳すところが嫌いだ。
また有名な戸田節も見られた。彼女は「~と言うの?」「~と思うの?」を「~と?」と訳す。また、「~していい?」を「~も?」と訳す。「字幕は7文字まで」というルールが骨身に染みた結果であろう。
それはまだ我慢できる。耐えられないけれど。どっちなんだ。
しかし我慢できないのは「~かもだぜ」。こんな話し方をする日本人がどこにいる?!
うわさには聞いていたのだが、初めて目にした(耳にするのは英語)。
「かもだぜ」
「かもだぜ」
「かもだぜ」
ね、やっぱり変でしょ?
また、秘書ナタリーの手紙にも"love"と"actually"が含まれていたので、そこは上手に訳してほしかった( I am actually in love だったかな?)。
ずいぶん字幕にばかり苦言を呈していたのでそろそろ終わる。
私がイギリス好きであるということ、ポップスの使い方が大変上手なこと、そして映画で誰も死なないこと(!)、それらを加味して。
おすすめマークほい! ★★★★
どこかで書いていたが、美人が一人しか出てこない、という稀有な映画(《9》の花嫁=キーラ・ナイトレイ)。
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