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292 偉いぞ! 立ち食いそば 東海林さだお

 文春文庫。

 「男の分別学」シリーズの中で、読み応えのある一冊といえる。

 まずは一本目、「駅弁奥の細道」。担当I田青年に、駅弁の女王として有名な小林しのぶ女史を連れての三人旅。連れて、というか連れていってもらって、だが。
 一泊二日で24個の駅弁を食べる。24個の弁当を推薦してもらったのだが、24個全部食べることにしたという大胆だ。弁当の解説もしのぶ女史がいるからばっちり。

 そして表題作の「偉業! 立ち食いそば全制覇」。これは富士そばというチェーン店のメニューを毎日一つずつ食べていくというものである。立ち食いでもいじいじしつつ虚勢をはっているのがおかしい。おおらかな富士そば社長との対談もおかしい。

 「男は黙ってニンニク注射」もいい。下の話を上品に語るというのは難しいものである。
#男は内に滾るものがなければならぬ。
#内に猛るものがなければならぬ。
#男は常にガルルでなければならぬ。
 文字数を揃えたリズム感。

 黒川伊保子との対談、「ことばの不思議を尋ねてみたら」も知的に楽しめる。黒川氏はSは爽やか、Hは開放、Kはスピード感、濁音は力強さと賑やかさなど、音の響きの持つ意味を研究している。初対面だが通じるものがあるようで、対談もテンポよく盛り上がっている。

 奥田英朗(小説家)の解説がいい。一文目。
#東海林さんは永遠の気後れ青年である。
 これにやられた。著者の作品には、店員に対して「こんなことを言うと気をまずくされるのではないか」と懊悩する場面がよくある。それをこれほど的確に簡潔に表した文は見たことがない。

#(駅弁奥の細道に)「なんなら同行してもいいわよ」(小林しのぶ) 

#熱いツユを含んだコロモはモロモロとおいしい。

#イカはモンゴウらしく、厚く、硬く、アギアギと噛みでがあって食べでがある。

#(冷やしきつねの)こういう冷やし系のツユは飲んでもいいものなのだろうか。

#(立ち食いそば屋で丼物を食べると)噛んでいる間は、口以外の動きはないわけですね。
#見た目には、立ち食いそば屋の店内でただ突っ立っているだけに見える。
#これがとてもみっともない。

#シャンペンのビンの口から白い泡を噴出させる行為を、男性の射精になぞらえる人もいる。
#それを人々の頭上にふりかけるのは、優位に立った男性の支配欲の誇示であり、ふりかかるのを容認する人々にとってはそのことの是認である、という人がいるのだ。
#何だそりゃ。
(デズモンド・モリスの説)

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