291 トコトンやさしい宇宙ロケットの本 的川泰宣
図書館より。日刊工業新聞社。第2版。今日からモノ知りシリーズ。
見開きワンテーマで、ロケットの歴史から未来まで概観できる。それが65章ある。
巻頭には著者の恩師であり、日本ロケットの父、糸川英夫先生の言葉がある。
「初めて学ぶ事柄の場合は、私はまずマンガから入ります。概念的につかんでおけば、専門書に一気に入っても戸惑うことがないのです」
糸川英夫は明治45年生まれである。
「宇宙教育の父」「宇宙の語り部」と言われる筆者だけあって、筆はすいすい進む。イラストや写真も豊富で、確かにこの一冊でロケット通になれるであろう。文章は平易だが、イラストページにはさらっと高等数学のlnなんて出てくる。私もわからないが。
コラムはさらに筆が滑って楽しい。糸川先生の小便小僧を作る計画があるとか。異常飛翔をしたX線衛星コルサのロケットを爆破した悲しい思い出。そしてコルサb、すなわち「はくちょう」に再び挑んだ思い出。はくちょうは酷使されて「はくじょう」とからかわれた。
*個体推進薬の中には星型や車輪型に穴が開けられる。これは「中子」と呼ばれるカタの周りに流しこみ、固まったらカタを抜き取ることで成形される。
*糸川博士はアルファ、ベータ、オメガとロケットを開発する予定であったが、IGYに間に合わせるためにアルファとベータは試験だけにしてカッパに跳んだ。語感がよいから。
IGYは南極で有名な、国際地球観測年である。
*液体燃料がぴちゃぴちゃ言うのをスロッシングという。それを押さえるためにバッフル板というふたを入れる。
*アリアン・ロケットは南米の仏領ギアナから打ち上げる。
*アメリカのマリナー1号のロケットが打ち上げに失敗したのは、プログラムからハイフン一文字が抜けていたから。これを「悪魔のハイフン」と呼ぶ。
*発射点からやや膨らんだ三角形の形に、落下限界線(外)、破壊限界線(内)が広がる。
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