286 ヘンな事ばかり考える男 ヘンな事は考えない女 東海林さだお
文春文庫。表紙はキャバレーで踊る著者。
ノスタルジックな話がおもしろい。「レッツ・トライ・ザゼン」では子供の頃、留守番という仕事があったと言っている。
#当時はセールスマンがしょっちゅう来るわけでなし、ドロボウが横行していたわけではないのに、一体あのお留守番の意味は何だったのだろう。
#友達が「遊びに行こう」と誘いに来ても、
#「いまお留守番してるからダメ」
#と、一歩も外へ出られないほど、留守番は厳格な役割だったのである。
「あるおじさんの筆記具史」ではなんと蝋石が登場する。
#しかしまずいな。
#石盤、蝋石、石筆と、やたらに石が出てくる。
#「要するにアルタミラの洞窟みたいな生活をしていたヒトと思えばいいわけね」
#と思われはしないか。
もちろん肥後守で鉛筆を削った話もある。ヒノデワシの消しゴム、吸い取り紙。
ノスタルジーは「おじさんたちのディズニーワールド」で最高潮に達する。「貯水式手洗器」「懐かしの錠前」なんてイラストが17点も登場する。
そう言えば昔の小学校の窓がこのねじ式の錠前だったなあ。
「人間は哀れである」 見事。おじさんの裸を描いて、「これが哀れでなくて何が哀れか」の書き文字。
「園山俊二の哀れさよ」と唄う漫画家Oさんて誰か検索したら、故人であった。合掌。
高橋春男との対談、「似顔絵について」は必読。高橋春男が惜しげも無く秘訣を語っている。
#要するに、似顔絵はレイアウトだと。
#(サッチーは)すぐに似ちゃうんだよね、あの人は。
#特徴だらけですから描きやすいですよね。世の中の悪しきものをすべて集めたっていう感じ。
#前に針すなおさんにしつこく訊いたの、「似顔絵の極意は何ですか」って。何回訊いても、同じことしか言わないの。「よく見ろ」って。
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