288 上がれ! 空き缶衛星 川島レイ
図書館より。新潮社。
缶サットに青春を燃やした大学(院)生たちの物語。
缶サットとは空き缶の中に機構を詰め込んだ小型人工衛星のことである。物語は東京大学工学部航空宇宙工学専攻の院生1年、津田、酒匂(さこう)、そして太田の三人がハワイの宇宙シンポジウムに誘われるところから始まる。
主人公の一人、津田雄一が一番魅力的に描かれている。小学校のころ家族とアメリカに行き、ジャンボジェットやスペースシャトル発射台に興奮。鳥人間コンテストに熱中。大食い。遠心力を使って薄い膜を広げる、膜展開衛星を研究している。ガンダムを見ながら膜の折り方を考える。
学生らしく、ハワイのベッド二床を三人でシェアした話や、机や床などどこでも寝られるという雑魚寝話がやたら出てくる。
部品のマイコンや電池を秋葉原の秋月で買う。渋谷のハンズで薄い膜であるセロハンを買う。
天井から衛星を吊り下げて膜展開実験。
「おはよう日本」に生出演。
ハンダ付けの上手なかわいい女の子に興奮。
後半は怒涛の展開。残念ながら宇宙には行かず、地上40㌔までの打ち上げとなるが、アメリカ・ブラックロック砂漠に向けてチームは動き出す。東工大チームとのライバル関係も心地よい。
表紙がいい。青空に、なっちゃん。
#「じゃあ、(略)遠心力でまわして広げていくのは?」
#この、風呂敷の遠心力展開は、津田が四年生の時に卒業設計で選んだテーマだった。
なんと世界初のソーラー電力セール「イカロス」の構想はすでにここにあったのだ。
#国際宇宙ステーションで使用する蛍光灯の値段を聞いて驚かない人はまずいないだろう。なんと一本一千万円もするのだ。
#「設計に最初から関わっていれば、自分の担当箇所だけでなく、全体に対する担当サブシステムの位置づけが容易にできる。だから、一連の流れも理解できる。システムエンジニアリングを学ぶには最適なんや」
「はやぶさ」に通じる。
巻末にはメンバーの名前がある。
森治 世界初のソーラー電力セール実証機「イカロス」の責任者。
澤田弘崇 絵本「イカロスの大航海」の文を担当。JAXAでロボット開発、というからREXJのことであろう。(この声がかわいい)
鶴見辰吾 ソニーのアイボを開発。とあるが、これは検索しても確かめることができませんでした。
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