図書館より。平凡社。
リンボウ先生の著書は出会いが悪かったので敬遠していたが、これはおもしろい。文壇の話題になったのがわかる。
イギリスの食事はまずいと言われる。確かに新婚旅行で妻が一番喜んだのはイタリア料理だった。スコットランド名物のポーリッジもうまくて有名なわけではない。寒風に吹かれながら食べるフィッシュアンドチップスは絶品だけれど、ちょっと違う。
しかし著者は持っているものが違う。小さい頃から厨房に立ってきた。旅行者ではなく、そこに生活する研究者として自炊をした。先入観を排し、食材を検証する。研究者同士の付き合いもスノッブ精神をくすぐる。
なにより丸谷才一の腰巻の推薦文がよい。これ以上的確に本書をほめることは不可能である。
#このイギリス帰りの先生は、じつにおもしろい随筆を書く。をかしくて中身がある。藝があって品がいい。嘘だと思ふなら、立ち読みしてごらん。
#イギリスのモルト・ヴィネガーは日本の醸造酢のようには酸味がきつくないので、そのように(フィッシュアンドチップスに)たっぷりかけても、むせたりするということはない。
#外来文化の受容というものは、少なくとも無条件的に成されるのではない。なにか新しい事柄をあるいはモノを受け入れるとして、その場合、必ず需要側にそれとなんらかの意味で相似性を持った固有在来の現象がなくては、その受容された外来文化は定着もしくは土着化しない、と折口信夫は教えている。
#(長恨歌は日本ではラブロマンスとされているが)それは、日本の文学が、本質的に恋愛文学を中心的に持っているからであって(古今集、万葉集、伊勢、源氏、いずれも恋愛を取っちまったらなんにも残らない)
#スモークト・サーモン、真鱈子の燻製(スモークト・コッドロー)
-edを「ト」と表現しているのがうれしい。
最近のコメント