409 先生、カエルが脱皮してその皮を食べています! 小林朋道
図書館より。築地書館。副題、鳥取環境大学の森の人間動物行動学。
先生シリーズ第五弾。とぼけたギャグの質で言えばシリーズ最高傑作である。
#大学の一員である私も当然、「人と社会と自然との共生」を目指して日夜努力しているのであるが、努力すればするほど、みなさんに(結果的に)迷惑をおかけするような事件が発生する。
#この本は、そのような”事件”について、動物行動学や人間比較行動学からの鋭い視点で、把握し、分析し、一部、都合がいいように解釈し、人間も含めた生物のすばらしさをご紹介したものである。
*著者は若いころヘルマン・ヘッセが好きだった。ヘッセが書いた小説のなかの自然の生物や故郷などの描写を読んで胸がしめつけられるような思いになった。
#ヘッセが表現したかった本質を、わたしはあまり受け取らず(受け取れず)、枝葉末節の”自然の生物や故郷などへの描写”に反応していただけかもしれない。
人にはなぜ好奇心があるのか。著者はこう喝破する。
*驚きや意外性は自分はそれを知らないということの信号であり、だから脳はそれを学ぼうとするのである。それは、生存や生殖にとっても有利に働く。芸術も同じ。驚きとともに新鮮な感覚を蘇らせてくれる作品や行為に、人間は芸術を感じる。
#生態系のなかで、”食う-食われる”の関係の生物の数のバランスが取れているのは、両者の間に、このような、しのぎを削る進化競争が起こっているからなのである。けっして、自然界が本来的に、”調和”を保つ能力を持っているからではない。
このような、とは植物が食いつくされないように毒物を含んだり、自分を食べる捕食者の天敵をひきつける物質を空気中に出すことをさす。
*リスなど被食者が、ヘビなど捕食者に、近づいていき、一定の距離を保ち、警戒的な動作や発声を繰り返すことをモビングと呼ぶ。
#”人間が、火事や事故の現場に対して示す強い関心”、これは一種のモビングではないだろうか。
*現場を見て、会話によって、犯人や危険な場所、凶暴な動物などについて情報を得ているのである。
「ペガサスのように柵を飛び越えて逃げ出すヤギの話」の写真が格好いい。
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