540 はい、こちら国立天文台 永沢工
図書館より。新潮文庫。副題、星空の電話相談室。
天文台の電話相談のおじいさんは、戦前生まれで地震研究所に奉職し、南極観測隊にも加わった古強者。「相談者と喧嘩をしない」「こちらから電話を切らない」「わからないことは後でかけ直してもらってその間に調べる」という三原則を若い回答者に示すが、自分がいちばん戦闘的だ。
「日の入りの時刻を教えて」という質問が続き、「学校の宿題である」と聞くと教えない。親はなんとか聞き出そうとするがエスカレート。
「天文台としては宿題をやってあげるわけにはいきません」
「でも、あんた公務員でしょ。国民のためになる仕事をするのが公務員でしょ」
「もちろん公務員ですよ。公務員だからといって、できないことはできないんです」
理科年表を見て答えただけの回答に「肩書きを教えて」と来た。著者はもちろん理学博士の肩書きを持っている。質問者は国立天文台の教授、なんて高位を期待している。
「ああ、わかりました。私の職名は教務補佐員と申します」
「補佐員……ですか」
「そうです。教室の教、勤務の務、課長補佐の補佐で、教務補佐員です。わかりやすくいえば、非常勤のアルバイトということです」
*新月の日は、旧暦で月が一ヶ月の旅立ちを始める日、月が立つ日であり、つきたち、つまり「ついたち」である。
#とにかく、相手からお金をもらって引き受けている仕事ではないから、もし怒ってお客さんが減ったとしても、こちらはちっとも困らない。
それを言っちゃ、おしめえよ。
解説は松本零士。ヘールボップの写真を求めた石垣島の少女がお礼にサーターアンダギーを贈った話に目をつけたのはいい。ところが文章がみな、
「天文台は、…」
「そのうち、…」
「ところが、…」
「つまり、…」
と第一文節のあとに必ず読点を打つようになっている。そんなレベルではないはずだが。
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