1186 女の子は本当にピンクが好きなのか 堀越英美
図書館より。Pヴァイン。
元々は音楽雑誌に載せた、今時の女児はピンクでキラキラにデコる、という連載であった。それがジェンダー論に正面から取り組み、アメリカのSTEM教育(Science, Technology, Engineering and Mathematics 要するに理系)を追い風とし、ピンク嫌いだった自分とピンクにはまった自分の娘の姿を織り交ぜながら、ハード路線とソフト路線を自在に行ったり来たりする面白い本。
ピンクが嫌いなのでなくて、正確には、「女の子ならピンクでしょ」と押し付けられること、に反感を持つのだ。「客体」という言葉が何度も出てくる。客体としての女性。ピンクが好きで、算数が苦手で、ピンクカラー(小売・食品・美容・ケア・アシスタント)の仕事に就き、おバカで頼りない、男性にとって都合のいい存在。
赤ちゃんの顔はピンク色で、それを好む母性本能があるという説は真実であろう。
#成長過程でガッツ石松もしくは宮沢喜一を経由するアジアの赤ちゃんには、あんまりピンクは似合わない。
#「ただ一人の女性、ピンクレンジャーはどうしますか」
#「ちょっと子供には、えげつないかな」
当時ピンクには今よりもエロティックな意味があった。
#女性の社会進出にともない、ぶりっ子は女子力と名前を変えて、生存戦略の一種として積極的に推奨されるようになった。
*男性の網膜に広く分布するM細胞は、位置・方向・速度に関する情報を集める。女性に多いP細胞は、色や質感に関する情報を集める。
*シナモロールは、サンリオのデザイナー奥村心雪氏が小学生時代にピンク離れの時期があったことから、女の子向けに水色のキャラクターを作りたいという思いデザインしたそうだ。
幼児はピンクが大好きで、小学校上半分あたりから水色が好きになり、十台後半からまた自分のピンクを見つけて分化する、という流れがあるそうだ。
*母性、エロ、幼さ、そして献身……日本におけるピンクは意味が何重にも重なっている。一言でまとめると「客体であれ」という期待だ。
*ハイディ・ハワード実験; 野心的な起業家が成功する話を、男性名ハワードで読み上げると好ましい同僚とみなされ、女性名ハイディで読むと自分勝手で一緒に働きたくない人物と受け止められる。
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