1247 やなせたかし 筑摩書房編集部
図書館より。ちくま評伝シリーズポルトレ。副題、「アンパンマン」誕生までの物語。
ちくまらしい丁寧な本作り。その場にいるかのような取材。表紙の似顔絵は寺田克也。小学校高学年にも読める文章。
まずやなせさんの人生がドラマティック。日中親善に奔走する若い父は中国で没した。弟は医者の叔父の養子になった。美人の母は新しい男を作って去った。おじに預けられ、弟と再会するが、養子と居候では待遇が違う。修学旅行も行きたいのに「行きたくない」と遠慮した。
一浪ののち東京高等工芸学校に合格。「机にかじりつくな、一日一度は銀座へ行け」という豪快な先生に出会う。学校新聞で編集の力を発揮する。お父さんは編集者だった。
田辺製薬入社。宣伝部。赤紙が来て中国へ。父の足跡をなぞる。弟は海軍で戦死。中国で紙芝居が人気になる。敗戦後時間ができたので兵舎でお芝居をする。脚本を書き、歌を作る。
高知新聞の記者になる。気に入らないと相手にハンドバックをぶつけ啖呵を切る、先輩の小松暢(のぶ)に恋心を抱く。
#「やなせさんの赤ちゃんが産みたい」
そう言わせる魅力。
あとはよく知られるとおり、三越の包装紙にロゴを入れたり、一度インタビューをしただけの宮城まり子に気に入られてリサイタルの構成を頼まれたり、永六輔の舞台美術を担当したり(ポスターも)、『手のひらを太陽に』を作詞したり、手塚治虫に呼ばれてキャラクターデザインをしたり、詩の雑誌を作ったり、マルチタレントの魁である。
*困ったときのやなせさん
依頼を断らない、という人柄だったのであろう。
*(「まんが学校の先生だ」と子どもにサインを求められて)自分に代表的なキャラクターがあったならば……
#初代「あんぱんまん」はマントをつけた小太りのおじさんで、お腹の空いた子どもたちにアンパンを配っているという物語でした。自分でパンを焼いているのでマントには焼けこげがあるし、顔も団子っ鼻でいわゆる世の中にあふれる「正義のヒーロー」のイメージとは真逆のキャラクターでした。
#「正義とはなにか。傷つくことなしに正義なんてあり得ない」
#美味しいアンパンの敵といえば、ばい菌的な存在だろうと考えます。東京田辺製薬で図案の仕事をしていた頃に、ばい菌を漫画的に表現したことがありました。槍を持った黒い小さな悪魔のような生き物です。
*ミュージカルのステージは、この存在感たっぷりの敵役の存在のおかげで、ぐっと引き締まりました。
タナベ製薬の伏線回収! ほぼ四十年というスケール!
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