1347 愛着アプローチ 岡田尊司
図書館より。角川選書。副題、医学モデルを超える新しい回復法。
愛着障害を克服するにはどうしたらいいか。医学モデルでできなかったことができるようになる方法がある。
#ある四十代の女性は、数年前に他の医療機関で発達障害と診断され、以来すっかり意欲をなくし、家事も一切せずに、ほとんど寝たきりで過ごしていた。自分はどうせ障害者なので、何をしてもまともにできないから、努力することが虚しくなったのだという。筆者が、検査の結果、発達障害という診断は間違いだったと伝えると、少しずつ自信を回復し、数か月後には、何年も作らなかった子どもの弁当を作ったり、掃除をするようになった。
*代理ミュンヒハウゼン症候群
原因不明の高熱を繰り返す子供をビデオ撮影していたら、母親が点滴のセットに水道水を注射器で注入していた。
*オキシトシンというホルモンが授乳や分娩に関係していることは二十世紀の初めから知られていたが、そのオキシトシンが親子や夫婦の絆を支えていることがわかってきたのである。さらに、今世紀になって、オキシトシンには、驚くべき働きがあることがわかった。社会性を高め、目を合わせたり、親密な感情を抱いたり、困っている人を優しく助けたり、寛大に相手を許したりすることにも、またストレスや不安を軽減し、落ち着きを高め、じっとしていられることにもオキシトシンの働きが関係していることがわかったのである。
#妻と別れた男性の平均余命は、十年短くなる
*親子関係が絶望的にわるいケースでも、みごとな回復を遂げ、構成するケースもあった。そうしたケースを見てみると、必ずその人を親身に支える存在との出会いがあった。それは、多くの場合、彼らと生活をともにしながら指導を行う法務教官であり、ときには医師や心理士、外部のボランティアであった。(略)親がしてくれるはずだったことを、いくらかなりとも補ったのである。
*ここのカウンセラーの特性にはばらつきがあって当然であり、認知的なアプローチが得意な人もいれば、共感的なアプローチが得意で、すぐに打ち解けた関係を作れる人もいる。回避型の人には、認知的なアプローチタイプが相性がいいのが普通だ。彼らは共感されても居心地悪く感じるという場合もある。不安型の人は、愛着を過剰に求め、共感に飢えている。認知的なアプローチはあまり心に響かない。
#自らを振り返るという高尚な行為は、高度に進化した前頭前野によって可能になるメタ認知と、安全基地の存在によって可能となる愛着という二つの条件がそろって初めて成し遂げられる。
#両価愛着型は、本来幼い子供に認められる不安定型愛着タイプの一つで、本心とは反対の行動をとることが特徴である。つまり、甘えたいのに素直に甘えられず、本音とは正反対に困らせることをしたり、背を向けてしまったりする。
#ご自分の問題でないことで悩むのは、自分が雨女だから雨が降ったと自分を責めるようなものです。馬鹿げていませんか?
#①安定型 過度に依存することも支配されることもなく、必要に応じて他者に頼ることもでき、安全基地となる存在と安定した関係を気づいていける。
#②回避型 親密な関係を避け、困ったときほど他者に頼ることができず、また他者から頼られることも重荷に感じてしまう。感情を表現したり自己開示したりすることを避けてしまう。
#③両価型→大人では不安型(とらわれ型) 過剰に愛情や関心を求めようとし、相手の顔色を見て過度に相手に合わせる「よい子」の面と、愛情を求める気持ちを裏切られると、怒りや拒否で反応してしまう「悪い子」の面が、両極端に現れやすい。
#④恐れ・回避型 愛情や関心を求める傾向と、傷つくことを恐れ親密な関係になるのを避ける傾向の両方が同居しているタイプで、警戒心や猜疑心が強い。
#⑤未解決型 愛着トラウマを引きずり、親との関係において、あるいは、親密な関係になると不安定な面を見せる。
#両価型では右前頭前野(情緒や共感と関係が深い)が過剰活動していて、左前頭前野(理性的制御と関係が深い)の働きが相対的に低下しているといわれています。
#一方、回避型と呼ばれる、情緒的な面を抑え、親密な関係を避けることでバランスをとっているタイプの人は、まったく逆に左前頭前野の活動が亢進していて、右前頭前野の活動が低下しているということです。
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