1231 おでんの丸かじり 東海林さだお
文春文庫。70番。
ここに宣言してしまうが「あれも食いたい」シリーズの最高傑作ではないか。
「チキンラーメン四十五年史」では
#喫茶店などのマッチを並べるのがはやった
#片手鍋逆手じか食いというのもはやった
との書き文字。
*インスタントラーメン45年の歴史は……コンビニエンスストがコンビニになったようにその名前をちぢめようとしてついにちぢめられなかった歴史でもある
慧眼。
静岡のおでんに、
#縫い串にして刺しちゃう。
「縫い串」。そんな語彙があるとは。
カレーライスのグレイビーボートに
#大体ねえ、あの気取った取っ手、あれ有効か?
#あそこんとこをつかんであれを持ち上げたことあるか?
#せいぜいあそこんとこを持ってズルっと移動させるぐらいだろうが?
と容赦ない。そもそもグレイビーボートなんて用語は使わないで、
#例のヘンな取っ手がついていて腰高の容器にカレーソース別盛りで出てくるやつ。
「ヘンな」のカタカナ書きに深い嫌悪感を感じる。
カツは大好きだ。ビアホールの薄っぺらいトンカツを称える「カミカツのシアワセ」では
#狭いニッポンの、広大なカツの平原、肉の大陸、コロモの大地。
と最大限の賛辞を与えている。
オチを書くのはためらわれる。
#シアワセのランクでいったら、ヘビイ級とかミドル級とまではいかないが、ま、フライ級といったところでしょうか。
「ま、」で一拍置くのだ。
実践も抜かりない。キヌサヤのお話。
#料理の本に「ベーコンと炒める」というのがあって、やってみたらビールに合う。
#とろたまの作り方は簡単だ。
#沸騰したお湯の中に、冷蔵庫から出したての卵(つまり室温ではない)を入れて七分間ゆで、ただちに冷水で冷やす。それだけ。
#多分、何個かは割れるので多めにゆでるのがコツ。
ここまで配慮している。割れたんだ。
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