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1175 フィネガンズ・ウェイクⅠ・Ⅱ / Ⅲ・Ⅳ / フィネガン辛航記 ジェイムズ・ジョイス 訳・柳瀬尚紀

 河出書房新社。三冊ともハードカバー。『Ⅰ・Ⅱ』は1992年10月20日の6版で4,800円。腰巻には高橋源一郎、柄谷行人、森毅の推薦文がある。もちろん『辛航記』は柳瀬尚紀先生の御本である。

 学生時代アイルランド好きの私はイェイツにはまり、ジョイスの『ダブリン市民』に手を出した。そうなるとこの本に辿り着くのは必然である。90年代前半に買って、そのまま投げ出し、最近読み始めた。いつからかはわからないがこの三年くらい読んでいたと思う。
(『ダブリン市民』は別の人の訳で、柳瀬尚紀先生の訳した本は『ダブリナーズ』です。)

 riverrun(川走)、アダムとイブ礼拝亭を過ぎ、く寝るなんとか湾曲するなんとか…ホウス城とその周縁。(うろ覚え)

 やたら歴史上の人物が出てくる。HCEとはHere Comes Everybody。男女の艶話が軸なのか。ハンプティ・ダンプティ。誰かが誰かと戦っている。ALPはヒロインのアナ・リヴィア・プルーラベル。シェムとショーンって誰だ。イアウィッカーは誰? 演劇? 楽譜?
 読んだはいいがさっぱり筋がわからない。『辛航記』を読むと重層的に書かれたものを重層的に訳していることがわかり、「ああここはAとBの二つの意味をかけているんだなあ」と楽しめるようにはなった。

 『Ⅰ・Ⅱ』p.28, 原作p.24、「琥珀傘」はamberとunbrellaを混ぜていたのではないか。

 同p.234, 原作p.216、「アナは過去、リヴィアは現在、プルーラベルは未来。」
 珍しく素直な日本語。この意味はなんだろうか。

 『Ⅲ・Ⅳ』p.478, 原作p.404、「二十二唐っと人参燃日空火照る紅」 カラットとキャロットをかけているのはわかるが、ANA?

 同p.612, 原作p.512「化貿徒どさまわり探航人」 その前に「大海原」「潮吹き海峡」「大潤ス子ダ蝦蟇口遊び」(おおほとバスコダガマぐちあそび)があるので、探検家のジョン・カボットのことだと思う。

 同p.634, 原作p.528「あんたは主都を分捕って、一五四二年以来、獅子の報州を得てるけど、しゃべり谷君のあんたの堺決めと、おれとの間にはね、アイルランドのあらゆる差異があるんだ。」
 1542年にイングランドのヘンリー8世がアイルランド王を宣言。

 読み終わるまではウェブで検索しないと決め、それを通した自分は偉いと思う。

 読み終わったので検索する。……読んで自分なりの解釈をしている人たちの意見を読むと、またいつの日か読みたい気分になる。
フィネガンズ・ウェイクとは僕にとってなんだろうか 浜田龍夫
 これは読み応えがある。
 読み始めたのは2017年の12月。ちょうど三年かかった

#アルコーラン
 怒られる!

 『辛航紀』の「Alice on CD-ROM」を読んでOEDを買った。「自分の行動を変えた本は良書」というマイポリシー。

 柳瀬尚紀先生は2016年7月30日に亡くなっていた。『アリス』二冊や『ナンセンス感覚』『ジェイムズ・ジョイスの謎を解く』『辞書はジョイスフル』あたりが本棚にある。ダールの『チョコレート工場の秘密』も読んだ。翻訳の泰斗であった。今さらながらご冥福をお祈りします。the

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