1199 ラジオのこちら側で ピーター・バラカン
図書館より。岩波新書。
音楽と語学が好きな青年が一人日本に降り立ってからの自伝。著者の人生を通して日本のラジオやDJの歴史が見えてくる。好きな音楽だけをかけたいがそうはいかない。母語ではない日本語でラジオの話し手を務める困難。台本ありから台本なしへステップアップしていく高揚感。
今の日本のラジオは、音楽をかけても一番だけで、すぐにとりとめもない話がかぶさってきてしまう、と危機感を持っている。
#当時住んでいた吉祥寺のジャズ喫茶に入り、聞きたかったウェザー・リポートというグループのアルバム、「ミステリアス・トラベラー」をリクエストしてみました。お店はそのレコードをかけてくれましたが、かかった途端にお客さんの半分くらいが店を出ました。
*YMOの一番の特徴は、東洋的なメロディをパロディのように使ったことです。「外国人が東洋的に感じる」メロディをあえて使うという目論見で、それは一つの戦略として理解できますが、売り方ははたから見ていて納得できなかった。アルファ・レコードが配給権を持つザ・チューブズの前座としてYMOがアメリカツアーを決行し、日本の音楽雑誌がそれを「YMOが海外制覇!」という記事にする、という売り出し方でした。これでは「ハイプ」(Hype 大げさな売り出し)じゃないかと思ったものです。
ピーターはYMOの歌詞の英語の多くを手掛けているが、内心はこうだったのか。今はきゃりーぱみゅぱみゅが東洋的なメロディを使っている。
*「素(す)」(ラジオの無音)
*午前三時とか四時の「墓場シフト」(Graveyard shift)
*誰も番組を聞いていない時間帯
#竹中平蔵氏が総務大臣になって設置した「通信・放送のあり方に関する懇談会」は、2006年6月の最終報告書で、NHKのFMは「公共放送としての役割はすでに終えた」として、2011年までに民間に開放すべきとしていました。市場原理を公共放送にもちこんだ、恐ろしく文化に理解のない考え方です。クラシック音楽・ポピュラー音楽のどちらの業界からも、リスナーからも避難をあびました。
ここでも出たか竹中平蔵。この名前が出るとろくなことがない。激しい怒りを淡々と描写する筆致にぞくぞくする。
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