1216 バカボンのパパよりバカなパパ 赤塚りえ子
図書館より。幻冬舎文庫。
偉大なギャグ漫画家、赤塚不二夫の生涯を娘の目から見た伝記。これは第一級の資料である。写真が多いのも貴重だ。旅館を借り切って大宴会をする。キャンプカーやクルーザーを買ってもすぐに飽きて手放してしまう。お金を取られても「また仕事で稼ぐ」と気にしない。変装大好き。ママ(妻)も大好き。
二十歳の頃よこたとくおと意気投合して五畳半に同居した。このよこたさんの写真が本人の似顔絵そっくりでおかしい。
トキワ荘の仲間と違ってなかなかヒットが出ず、「漫画家をやめてボーイになる」と相談したらテラさんがかなりのお金を渡して「これが続く限り頑張ってみろ」と諭した。やはりここは寺田ヒロオなのだ。
後半の展開は悲しくて触れられない。
#オレは、嫌いな人があまりいないの。そういう気持ちで描いているから、オレのマンガの登場人物はどこかかわいいんだ
考えてみれば「これでいいのだ」とは最高の決め台詞である。条件も理由もない完全なる肯定。
#何だ文句あるかっ! オレたちは「永井豪とダイナミックプロ」だっ!
温泉でどんちゃん騒ぎをし、言い返す。フジオ・プロみんなお気に入りのギャグだという。発言は小野ヤスシ。
バカボンの原稿を担当五十嵐さんがタクシーに置き忘れた。レシートもない時代。
「ネームは残っているか?」「よし、ネームが残っているから、また描ける」
担当に渡したときの台詞がしびれる。
「二度目だから、もっと上手く描けたよ」
戻ってきた原稿は「同じ失敗を繰り返さないように、おまえが持ってろ」と担当に渡された。赤塚氏が亡くなって、その原稿はフジオ・プロに返却された。
#生き方と作品の間に矛盾も落差もない。パパはできることの極限まで、真正面からきちんと向き合い、自分の信じる道を最後まで貫き通したと思う。
#「もっとまじめにふざけなさいよ」
#わたしの大好きなパパの言葉だ。
こんな素敵な本なのに解説が大友良英。本人だって困っている。古谷三敏か北見けんいちに書いてもらうべきである。
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