1313 蛾のおっさんと知る衝撃の学校図書館格差 山本みづほ
図書館より。郵研社。副題、公教育の実情をのぞいてみませんか。
類書では「鍵のかかった学校図書館に元気な学校司書さんが赴任し、インテリアを一新して本を入れ替え、ブックトークも恋愛相談も引き受け、図書館が満員御礼の部屋になりました!」というのが一つの黄金パターンである。本書の主役は学校司書でなくて司書教諭である。司書教諭であるから普通に学級担任や学年主任の仕事があり、それと司書教諭を両立するのは著者も「不可能」と言っている。ある年は国語20コマを持った上で図書館の仕事をしたとか。
またこの本は第一印象から裏切られる。間の抜けた題名に白タイツの蛾男が不気味に笑っている。ゆるい本かなあと思っていると短大を出て長崎県の小中学校で悪戦苦闘する先生の半生記としても楽しめる。
*ストーリーテリング; 素話(すばなし)
*平日は「昨日は夜の何時まで職員室に残っていた」と自慢し合うヘンな空気があった。この遅くまで残るメンバーの仲間に入れてやるかやらないかの査定が歓迎会の2次会で行われ、子持ち20代後半の私は残って仕事をしないからと外された。そんなもん入りたくない! とほっとしたのだった。ただし、道徳の資料などすぐに授業に使えるプリント類は外された教員には回されず、それだけはちょっと欲しいと思った。
*ヤンキー; 周囲を威嚇するようなことをし、仲間から一目おかれた少年少女を指す俗語。
#「先生、この図書館にほんと住みたいです。住めたらいいなぁ。ここにいたら、なんか、うちには帰りたくなくなる」
#入試が終わってからの日々は、放課後も毎日図書館に来て仕事を手伝ってくれた彼女。学校図書館をこよなく愛し、居場所としていた生徒だった。そうして卒業していた彼女は、高校に入学して1週間で自分の意志でこの世を去った。詳しいことはわからなかったが、彼女は家に居場所がなくずっと辛い人生を送っていたらしい。
早期退職までして著者は教育を動かすようになった。
#「世の中はすべてお金で動いておるのだな、人間の世界は。わしにはわからん」
#「そうなの。そうすると、議員さんに相談して議会に請願するという形が見えてきたのよ。それで、仲良しの学校司書を伴って、議員さんに現場の様子を話に言ったわ。もちろん専門分野が文教厚生の議員さんにね」
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