1322 ねむり 村上春樹
図書館より。新潮社。
歯科医の夫と小学生の子供を持ち、青いシティに乗ってスーパーマーケットに買い物に行く満ち足りた専業主婦が、突然不眠症になってこれまでの世界が幸せに感じられなくなる話。ハイドンとスイミングが趣味、という典型的主人公。
眠れなくなってから主人公は夫の愛も拒み、子供も愛せなくなる予感がする。ブランディーを飲むためにクリスタル・グラスを買い、チョコレートを食べながら『アンナ・カレーニナ』を貪るように読み始める。
#それでは私の人生とはいったい何なのだろう? 私は傾向的に消費され、そのかたよりを調整するために眠る。それが日々反復される。朝が来て目覚め、夜が来て寝る。その反復の先にいったい何があるのだろう? 何かはあるのだろうか? いや、何もない、と私は思う。
『TVピープル』と同時に書いた『眠り』を、ドイツのイラストレーター、カット・メンシックの大胆な挿絵を贅沢に取り入れて改題した。
書き直しに対するスタンスが面白い。
#内容を大きく書き直すのではなく、文章的に「ヴァージョンアップ」してみたいと思ったのだ。短編小説に関しては僕はそういうことをする。長編小説に手を入れることは一切しないが(そんなことをしたらバランスが崩れてしまう)、短編小説には現在のポイントから書き直す余地が往々にしてあるからだ。レイモンド・カーヴァーも同じようなことをしていた。
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