ひらいて
娘を学校に送るのが7:50くらい。それから駅前の映画館に行き、8:30の映画を見るのが一番便利。最近では「8時半映画」と呼んでいる。
はい、SNS。
ヒロインは美人で先生のウケもよく、ウェーイ系の遊び友達もいる。恋敵は地味で色黒で友達もいない病気持ち。略奪するのは簡単なはずだった。
女どうしのラブシーンはPG12としてはちときつい。
主人公の愛(山田杏奈)は文化祭の坂道風ダンス(夕立ダダダダダッ)のセンターで踊っている。美人で、先生から「文化祭の仕事もするし、推薦でなくても学力でもっと上に行ける」と認められている。「お前が来ないとカラオケが始まらないよ」なんて言うウェーイ系の遊び仲間もいる。順風満帆の人生。……ところが。
おすすめマークほい! ★★★★
エロスで★一つ増えたかなあ、と思いながら。
しかし愛には気になる男子がいる。「たとえ」君(作間龍斗)だ。ゴミ箱を階段から落としたり、数学の問題を聞いたりして接近を図る。たとえ君のロッカーを調べるとラブレターらしきものがあった。別のクラスの美幸(芋生悠)が書いたものだ。美幸は弁当を一人で食べるほど孤立している。地黒で話し方も幼く、ダンスの途中に倒れるほど病弱である。糖尿病でインシュリン注射が必要なほどだ。
――スクールカースト(嫌な言葉だ)トップの私が、美幸なんかに負けるわけはない。
愛は美幸の友達になりすまし、真偽を正そうとする。ところが。
始めの学校に忍び込むあたりでは「警備のない学校なんてないだろう」と白けていたが、徐々に緊張感を増す。寝ている美幸の指でスマホをオープンするところは見事なサスペンスだ。
基本的に、読者がはらはらとする場面を作るのがうまい。校舎の外壁を伝う。たとえの父親が包丁を使う。愛がたとえ父(萩原聖人)に「こっち向け」と言う。ミカ(鈴木美羽)と男友達がなんとか。注射を「私にも打たせて」。折り鶴の木は「きっと蹴り倒されるだろうなあ」と思ったらそのとおり。
どちらの母親もいい親である。愛の母親(板谷由夏)はお菓子作りが得意で、娘に「お父さんにメッセージを書いて」。ふつうこんな親からわるい子供は育たない。美幸も「お母さん(田中美佐子)が好きだから」とまっすぐ述べている。愛は暴走して自滅してしまうが、美幸にはぶれがない(板谷由夏と田中美佐子が16歳差というのは驚きである)。
山田杏奈は「愛の気持ちがわからなかった」そうで、監督(首藤凛)はイメージを押し付けず、山田杏奈が悩むのに任せたそうだ。芋生悠は「愛のことがよくわかる」と発言している。パラレルワールドだが、この役が逆転している映画を見てみたい。
こんなに愛欲のことを考えている高校生がいたら、周りは疲れるよね。
最後の「ひらいて」でノックアウトされる。愛が、美幸の愛の深さに、だ。
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