1346 同時通訳 松本道弘
図書館より。角川学芸ブックス。
同時通訳の西の達人が、師匠と仰ぐ西山千を追憶し、通訳という道についての信念を語る。
通訳者は黒子である。
擬態、本人になりきる。透明の原則、とも。He says / She saysとは言わない。Iで通す。
*通訳者は話者になりきって「I(私)」で通せ
*通訳者は事前庭者と打ち合わせ、できるだけ多くの資料に目を通すこと(敵、つまり話者を知ること)。
*「ウー」とか「アー」は耳障り
#その時の私の心境は、柳生の里を訪れた新陰流の流祖・上泉伊勢守秀綱に挑んだ柳生但馬守宗矩(後の柳生石舟斎)のそれに似ている。
上泉伊勢守信綱では。やたらと自分を侍に例えたり、女性通訳者をくノ一と呼んだり、と癖が強い。
#東京には、國弘正雄氏、村松増美氏という強豪以外に、小松達也氏、浅野輔氏、金山宣夫氏、女性では異彩を放っていた鳥飼久美子氏といった、疋田豊五郎クラスの同時通訳者がごろごろいるらしい。
#pragmatismイコール実務主義なんかではない。言葉の置き換えなどではない。言葉を物理的に、いや和英や英和辞書のように置き換えすれば、必ず混乱が生じる。名人は、言葉の裏にある音楽を訳される。
国際教養大学のグレゴリー・クラークは「実務的」と訳した。中嶋嶺雄は「実利的」と訳した。小松達也は「どう訳しても、日本人の耳にはネガティブに響きますね」とささやいた。著者は「僕なら、こうあるべきだといった理想論にとらわれずに考えますと……というふうにぼかしますね」と述べた。
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