1382 人間は考えても無駄である 土屋賢二
図書館より。講談社文庫。副題、ツチヤの変客万来。いしいひさいち・画。
友達の学者とバンド仲間二人(音楽家と言い張る)との対談四本。
持ち上げて落とす、という著者のお家芸が十全に発揮されている。気持ちよく笑った。
それでいて文学者と語る場面では、文系が軽視され、その中でも実用主義に傾くことに精一杯逆らってみせる。
#どうなるにしても、文学や哲学を切り捨てるような方向は間違っていると思う。人間がどこまで愚かになりうるか、どこまで勇敢でありうるか、どこまで残酷になりうるか、状況がどれほど人間を変えうるか、そういったことを教えて視野を広げないと、人間のことも自分自身のことも理解できないし、賢明な選択はできない。それを教えるにも文学は必要じゃないかな。
東京学芸大学教授、池田栄一。
*(詩のレポートに)授業で言えないこととかをいろいろ書いたりしている場合があるんです。「ちょっと今、就職で悩んでいます」みたいなことが書いてあったりする。「アメリカに留学したいんですがどうでしょうか?」とか。
いい先生だ。
*池田さんの場合は、学生が知らないことを教えるからいいよね。ぼくらの場合は、教師と学生では知識の量としては変わらないんだよね。単に哲学史上こういう意見が出たという事実を知ってるぐらい。哲学って学生が知らないことを教えるって学問じゃないから。
#内田さんがドラムスティックを見せて、「俺は昔これでメシを食ってたんだ。これで食べるのは相当難しいよ。とくに麺類は」って(笑)。
比喩から具体のすりかえという得意技。
#天文学とか科学とかの領域だと、みんなが知らないことを対象に研究することができるでしょ。でも心理学は、心を扱う。心の無い人なんて、土屋さんくらいのもので、大概の人は心を持ってる。
#まえに謝恩会で専攻が違う人が来て「内藤先生を本当は尊敬してたんです」って。一瞬うれしかったんだけども、なんで「本当は」なんだ? って。
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