1445 僕とアリスの夏物語 谷口忠大
図書館より。岩波科学ライブラリー。副題、人工知能の、その先へ。
引きこもり中学男子の家に金髪の美少女がやってくる。彼女アリスは話すことも歩くこともできない。幼なじみの女子とその子を好きな意地悪男子の三角関係に、AIに恨みを持つ大人が近づいてくる。
……というジュブナイル小説と本気のAI解説がサンドイッチ状に展開されている。
AIにできることとできないことは何か。AIはロボット三原則を守れるのか。キーワードは「マルチモーダル」である。視覚、聴覚、推論、接触、さまざまな認知機能を組み合わせることでAIは世界を学んでいく。
なんでもできるトップダウン指向のAIを作ることは難しい。AIが家の間取りなどを学び、ボトムアップ指向で世界を学んでいけるようなシステムの開発が進んでいる、ということが興味深い。
#SF小説の視点からすれば驚きに見えるかもしれないが、現実の工学的な視点からすれば、ロボット工学三原則をちゃんと実装するということ自体が「そんなこと言われてもなあぁ」と苦笑いを浮かべざるを得ない話なのである。
#この種の規範は抽象度が高く、それをすべて実世界で起こりうる事象に関するルールで書き起こすことはできない。言語的、もしくは記号的に記述されたルールを現実の事象と結びつけるのは、人工知能において難しい問題であり、その一部は記号接地問題(シンボルグラウンディング問題)とよばれている。
#筆者は、記号(言葉)の意味を支えるシステムである記号創発システムへの適応能力にこそ、人工知能が「人間」になるための重要な要件があると考えている。
#私たち人間は、環境との相互作用を経て、さまざまな概念を形成する。また言葉を発し、その意味を状況に照らして理解していく。言葉はまた、与えられ理解するだけのものではなく、私たちが生活の中で自由に創造できるものである。新しい物体や概念に名前を与え、言い回しやフレーズを創造していく。そして言葉の表現やその意味は変容していく。記号創発システムはこのような理解のもとに、記号の意味の源泉を説明する。
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