1465 教育鼎談 内田樹・寺脇研・前川喜平
図書館より。ミツイパブリッシング。副題、子どもたちの未来のために。
教育に経済原理を持ち込まないが信条の内田。ミスターゆとり教育の寺脇。教育史に詳しい前川。内田は大学運営で文科省に煮え湯を飲まされたこともあり、文科官僚だった二人との間には程よい緊張感が漂う。
*総合学科に対しては高校校長会も中学校長会も反対でした。生徒に選ばせたりしたら大変なことになるという、学習者主権とは正反対の考え方なのですから、押し切るしかない。小中学校では、画一的な教育を受けてきた子たちですから、高校生になっていきなり「君のやりたいことは何?」と聞かれても、ほとんどの子は「わかりません」と答えるでしょう。ですから小中学校の学び方を変えない限り、総合学科も広がらないだろうと、次の一〇年後の指導要領改定で、「総合的な学習の時間」を小中学校に新設しました。(寺脇)
そんな迂遠な理由で!?
*「ゆとり」という言葉は、文科省はずっと使ってきていました。ただ、「ゆとり教育」とは文科省は言っていません。マスコミが使った言葉なんです。(前川)
#読売新聞が書いたんです。(寺脇)
#今、多くの教育委員会が「スタンダード」というルールを作っています。小学校の授業の最初の五分はまず目当てを言いなさいとか、授業の組み方自体をマニュアル化して、すべての教師がこれを実践しなさい、と言っているところもあります。(前川)
#「市場のニーズに応じる」というのは、「後手に回る」ということだからです。まず「ニーズ」があって、それを満たすように制度を整備する。教育行政とはそういうものであってはならないと僕は思います。(内田)
#黒川検事長の定年延長も、本来適用できない国家公務員法を適応できる、ということにしちゃったわけですから。もう内閣法制局はむちゃくちゃですよ。とにかく屁理屈を作れ、と言われたら作るようになってしまった。(前川)
#法学部の学生にとって法体系の整合性って最優先事項じゃないですか。そのために知的なトレーニングをしてきた人たちが、今どんな顔をして仕事をしているんでしょうね。(内田)
*大阪都構想は「コストを最小化する」ために始められたものですけど、二度の住民投票を含めて、膨大なコストを空費している。「ここに一〇〇万円ある。これを効率的に使うためにはどうすればいいか」と議論するための会議を延々とやっているうちに弁当代で一〇〇万円かかってしまったというようなものです。(内田)
#教育再生会議委員にもなった白石真澄さんという人が「買い物するときはどこで買うかお店を選べるのに、学校は選べないなんてそもそもおかしい」と言うから、「それは、教育は買い物ではないからです」と反論したことがありました。(寺脇)
#悪いけど、反知性主義者には時間の感覚がないんです。世代を超えて受け継ぎ、継承されるものがあって初めて共同体は存立するという自明の理屈がわかっていない。(内田)
*(教育基本法の第四条)は「すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位または門地によって、教育上差別されないという規定です。つまり憲法と教育基本法は、教育を受ける器械については単に差別しないというだけではなく、経済的地位による格差は認めない、という考え方なのです。(前川)
2022年夏、小学生から四度も留学させてもらうほど経済的に恵まれた学生が「学歴重視」から「経験重視」を主張している。そんな思想を許してはならない。
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