1484 中学生から知りたいウクライナのこと 小山哲・藤原辰史
図書館より。ミシマ社。MSLive!BOOKS。
ロシアがウクライナに侵略してすぐに行われたオンライン討論をもとに緊急で出された一冊。
どうしてロシアとウクライナの関係は複雑なのか。二国だけではなく、ポーランド、リトアニア、モンゴル、ハンガリー、モルドバ、イスラム世界、多くの勢力がこの地を争った。宗教もローマ・カトリック、ロシア正教、イスラム教、ユダヤ教、土着宗教と分かれている。
#君主であるモスクワ大公はやがて「ツァーリ」を名乗るようになります。ツァーリは、古代ローマの「カエサル」の名前に由来し、皇帝を意味します。
#西ウクライナからポーランド人を追い出すだけではなく、ウクライナ全体を統一するためには、ソ連とも戦わなくてはなりません。そのためにはドイツの勢力拡大が助けになると考えたのです。
*ウクライナ民族主義(OUN)は、一時期、ナチス・ドイツと提携しました。一九四一年六月に独ソ戦が始まると、OUNはドイツ軍と協力してソ連軍と戦い、ウクライナの独立を宣言します。しかし、これはまったくドイツ側が認めるところとならず、ウクライナ民族運動の指導者、ステパン・バンデラは逮捕されて、収容所へ入れられてしまいます。ソ連領内を東へと進行したドイツ軍は、その後、一九四四年までウクライナを占領することになります。
#この問題が重要なのは、今、これがロシア軍のウクライナ侵攻の歴史的な理由づけに使われているからです。
プーチンがウクライナをナチ呼ばわりするのは、そういうことだったのか。
*ドイツはもともと、氷河によってガリガリと削られた岩石分の多い、あまり肥えていない土(軽土と呼ばれます)の土地がとりわけ北部に広がっています。バイエルン州などの南部には豊かな土地があるのですが、山間部だから決して北部の平原のような広い土地が取れるわけではない。そういうドイツにとって、ウクライナは非常に魅力的な地域に映っていたわけです。
#エカチェリーナ二世は、ポーランド・リトアニア領内のロシア正教徒を保護する必要があるとして内政に介入し、その延長でポーランド分割をやるわけです。ロシアだけではなく、プロイセンのフリードリヒ二世も、ポーランド領内のプロテスタントを保護する必要があると言って、エカチェリーナ二世と歩調を合わせて介入しました。
#ある国の内部に、自分の国と同じ言語や宗教の人がいることを口実にして、その国の内政に介入したり軍隊を送ったりする。こういうやり方自体については、十八世紀くらいにまでさかのぼることが出来ます。プーチン大統領は、エカチェリーナ二世が十八世紀に何をやったのかということをよく知っていると思います。
移民を受け入れるリスクはこれだ。
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