1516 ハーレムの闘う本屋 ヴォーンダ・ミショー・ネルソン
図書館より。あすなろ書房。訳・原田勝。副題、ルイス・ミショーの生涯。2016年読書感想文高校の部課題図書。
「黒人には知識が必要だ」とハーレムに黒人についての本だけを売る書店を開き、公民権運動を支えた男の生涯。
この本の中身は、発言やインタビュー、記事の断片という画期的な構造をしている。あとがきでは架空の人物もいるとわかるが、読書中はリアルさに圧倒される。
ミショーは子供のころは盗みを働く問題児で、教会の牧師である兄からは問題視されていた。それでも父親から受け継いだ商才と弁舌で食いつなぐ。兄が黒人に農業という色を与えようと事業を始めたときに、彼は気づく。
#この募集の仕事を通じて、わたしは多くの黒人たちと接したが、残念ながら、自分たちの歴史をちゃんと知っているものはごくわずかだった。自分がどこから来たのか知らなければ、どこへ行こうとしているのかがわからない。
#自分が何者かなのか知って初めて、現状を改善できる。
その本屋は公民権運動家や詩人、新聞記者などのたまり場になった。モハメド・アリもやってきた。マルコムXは店の前で演説を行なった。ミショーはいつしか「教授」と呼ばれるようになった。「ああ、おれは公言する(profess)からな」とうそぶく。店の名前は「ナショナル・メモリアル・アフリカン・ブックストア」。たくさん飾られた看板の一枚には、"THE HOUSE OF COMMON SENSE", "HOME OF PROPER PROPAGANDA"(良識の館、適切なる宣伝活動の拠点)とある。
マーチン・ルーサー・キング牧師のことはよく思っていない。黒人を雇わない本屋でサイン会をしたことに怒っている。
#わたしは20年も前から、ハーレム随一の書店を経営しているのに、キングも、キングの本を出している出版社も、わたしに会いに来ようともしない。
#キングは素晴らしい活動方針をもっているし、口にする言葉は洗練されている。でも、教養がありすぎて、ポケットに辞書を入れておいて調べないと、なにを言っているのか、ふつうの人にはさっぱりわからない。
#わたしはいつもキングの意見に賛成してきたわけじゃないが、でも、キングが、正義のために闘う兵士として、それなりの役目を果たしたことはまちがいない。われわれ黒人の中から声の大きなやつを排除してしまえば、あとの連中はすごすご引きさがると思っているやつらがいる。でも、そうはいかない。また、だれかが声をあげ、武器を研ぎ、闘いに加わるだろう。わたしは暴力を好まない。言葉を武器に闘っているが、なぜこれほど多くの黒人が怒りにかられているかは理解できる。暴力は天国から始まった。神は敵である悪魔に対して暴力をふるった。神は悪魔を天国から追い出したが、それは暴力だろう。
#切り倒されている時に、だまって立っているのは樹木だけだ。
読みながら死の雰囲気が横溢していることを感じるのは、なぜだろう。
伝説の書店 その2 ハーレムの黒人専門書店 - 愛書家日誌
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