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1521 トルコから世界を見る 内藤正典

 図書館より。ちくまQブックス。副題、ちがう国の人と生きるには?

 原題は『トルコのものさし 日本のものさし』。三十年近く前に書かれた本に、ちょこちょこ「今では…」という注釈を挟む。もちろんロシアのウクライナ侵略を受けて急きょ出された本だ。ロシア対ウクライナを直接言及するのではなく、あくまでもトルコを背景に、異文化・異民族が接する場所ではどのようなふるまいをすればいいか考える本である。

 意外なことに、トルコの国教はイスラム教ではない。建国の父、アタチュルクがそう決めたからだ。だから国立の大学ではスカーフ(ヒジャブなど顔をおおう物)の着用が禁じられている(私立大学は別)。しかし、イスラム教を信じている人は、着用の自由を求めている。日本人は「顔を隠すことを強制されるなんてかわいそう」と思うかもしれないが、必ずしもそうではないのだ。

*コロナ禍が世界を襲ったとき、いち早くワクチンを開発したのはドイツのビオンテック社だった。ファイザー社製ワクチンの開発元がビオンテックである。この会社を作ったのはウール・シャヒン博士とオズレム・テュレジ博士夫妻。二人とも、トルコからドイツに渡った移民の子である。

#日本企業の経営者たちは、「労働力は確保したい。だけど家族が定住すると子どもの教育問題やら何やらがでてきてやっかいだ。日本人だって単身赴任は珍しくないんだから、外国人労働者にもそうしてもらおうじゃないか」という理屈なのだが、こういう主張は、発展途上国の人びとにとっても、また、すでに外国人労働者を受け入れてきた国からみても、あまりに人権感覚に欠けている。

#「日本人は、なぜいつまでも外国人労働者を受け入れるべきか、受け入れるべきでないか、そんな議論ばかり繰り返しているのですか?」
#「門戸を閉ざしていても、日本にはすでに外国人がはいっているではないですか、なぜ、その現実から出発して、問題を解決しようとしないのでしょう。不思議ですね」
 ベルリンの外国人労働者担当者、バルバラ・ヨーンさん

 ウクライナ戦争で、トルコは「ロシアの侵略には一切正当性がない」と明言した。しかし欧米諸国の制裁には加わらなかった。
#トルコは、二つの国にとって、いわば隣人です。隣人は、近所でたいへんな争いが生じたら、どうするでしょう? 選択肢は二つしかありません。どちらかの味方をするか、どちらの味方もしないかです。戦争は、いつか終わります。一方の味方をすれば、戦争が終わったとき、他方とは二度と関係を元に戻せなくなります。隣同士の国というのは、当然、経済的な結びつきも強く、人の往来も多いものです。それをすべて失うような選択はありえないというのがトルコの判断でした。そして、歴史上、トルコは十数回もロシアと戦争をした経験があります。ロシアが戦争を始めると、いかに残忍で冷酷になるかを最もよく知っているのはトルコなのです。

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