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1522 いかめしの丸かじり 東海林さだお

 文春文庫81番。シリーズ第32弾。表紙は輪切りになったいかめしと、バンザイをして大口を開けて喜ぶ豚鼻の少年。
 書名こそいかめしが使われているが、実はタコの特集本。「タコぶつ噛み噛み考える」『蛸の足の「しまった」』「蛸さん鍋となる」の三本を収める。

#こんなことを書いても何の共感も得られないことは百も承知で書くのだが、飲み物をストローでチューチュー吸って飲むあの飲み方、ぼく嫌いです。
#格好がみすぼらしいし、仕草が惨めたらしい。
 名文。「飲み物を…」から始まる主題はある程度長いが、主張は「ぼく嫌いです」とぴしっと短く締める。井上ひさしのようだ。「箱物ジュースのチューチュー」より。

#今夜のおかずはタコぶつよ
#ワーイワーイタコぶつだ
#こんな子供いません
 「タコぶつ噛み噛み考える」の挿絵より。ないものを描く想像力。

#どうです、とかくちらかりがちな具をすべて仕舞ってあるではないですか。
#梅干しを仕舞い、鮭を仕舞い、ちらかりがちなおかかもきちんと仕舞ってある。
 「迫力の肉巻きおにぎり」より。おにぎりが具を仕舞う着眼点。(丸かじりシリーズは着眼点が肝(キモ)であるが)

*(アメリカンドッグにソースをかけると)そうすると甘みが気にならなくなり俄然ビールに合うことになる。
#どうもオレ、何でもかんでもビールに持っていこうとする傾向があるな。
#よくないな。
 いつも一人称は「ぼく」なのだが本心を吐露するときは珍しく「オレ」を使う技巧。しかしこういうオチは珍しい。「おいしいよ、アメリカンドッグ」より。

#そう、ゴハン。ゴハンと組み合わせてこそ、レバニラ炒めはその真価を発揮するのだ。
#合うんですねえ、ゴハンと。
#程よく火の通ったレバーの歯ざわりは、ちょっとサクッとしたような、粘りが少しあるような、少し苦いような、血の味も少しして、まさに内蔵の味、滋養の味。
 「着眼点」と並ぶ「口腔内感覚」こそ本シリーズの柱。

#コンニャクがおいしく煮えててよ
 「変わる変わるよおでんは変わる」の挿絵より。シンプルな描線で色気のある美人のイデアを描く。

 解説は小泉武夫。東京農業大学名誉教授。トイレに「ショージ君の漫画文学全集」を置いているのが通だ。この解説に若い漫画家を連れてきて「キャー、尊敬する東海林センセイの解説を書くなんておこがましい」というパターンはもう飽きた。これくらい重さのある人に頼んで欲しい。田崎真也さんのそれなんて最高でしたね。

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