1540 爪王 戸川幸夫 矢口高雄
図書館より。ヤマケイ文庫。副題、野生伝説。
三平一平を出っ歯にした老鷹匠(三平そっくりな息子がいる)と若い雌のクマタカの命がけのドラマが、山形県真室川の大自然を背景に繰り広げられる。物語はクマタカの夫婦が巣をこしらえ卵を生むところから始まる。成長、巣立ちが丁寧に描かれ、ついに人間と出会う。野生は鷹匠への服従を拒む。このままでは餓死してしまう。そこで鷹匠が取った最後の手段は。
もう一本、「北へ帰る」を収める。犬ブローカーにより東京に売られてしまった高安犬が、虚栄の飼い主から逃げ出して米沢の温かい元の飼い主のところへ走る話。
「虫の好かない」ブローカーも、太郎(犬)が北に帰ってからは、「もうここには来ない」とすっぱり諦め、わるい人ではないというのが読後感を高めている。こちらはゆりっぺをおさげにした女の子が登場する。
驚いたのは次のくだり。
#対岸のキツネの眼が青光りを発しはじめていた
#つまり鳥の視力がかすれる夕闇が迫っていたんじゃあ!!
暗くなってくると視細胞のうち昼間に活躍する錐体と夜中に活躍する杆体の出番が交代する。杆体は青の光に対する感度が高いので、夕暮れ時は青がよく見える。これをプルキンエ現象(プルキンエシフト)と呼ぶ。それを爺様(じさま)は経験上知っていたのだ。
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