1572 ザ・パターン・シーカー サイモン・バロン=コーエン
図書館より。化学同人。篠田里佐・訳。岡本卓・和田秀樹・監訳。副題、自閉症がいかに人類の発明を促したか。
自閉症の子供はパターンの発見に夢中になる。葉っぱの形にはどのようなパターンがあるか。どのスイッチを押すと照明が点くか。クルマの音を聞いて車種がわかる。それがパターン・シーカーである。システマイザーという呼び方もある。
あるものがあって、あることをすれば、こういう結果になる。If-and-then理論と呼ぶ。人間だけがその理論を使い、発明をすることができる。石器も、農業も、音楽もこの理論で説明できる。
脳を五つに分類しているのも興味深い。前述のパターン(system)を探すのが得意なのがS型。他人への共感が得意なのがE型(empathy)。中間がB型(balance)。そして極端なのがエクストリームS型、エクストリームE型。本書の主人公はエクストリームS型である。
#自分の言動の影響についてはあまり考えないで自分の考えや心の中にあることをうっかり口に出したり、オブラートに包んだ物言いをせず、自分の話す内容や話し方について間違いを見つけようともせず、事実だと弁護する。彼らは仲間を作ったり、関係を維持したりするのが苦手で、あえて共感をもって取り組もうとすると、他人から攻撃を受けやすい状況になりがちだ。
#ほとんどの人は家にある裁縫箱を見つけ出して、縫い物ができそうな針を探し当て、それを使う。それで満足なのだ。しかし、ある種の人びとは、特定の布に最も適した特定の縫い針があること、その特定の長さ、太さ、針穴のサイズに至るまで完璧なものがあることを知っているのだ。彼らは、たとえ何時間かかっても、必要とするその針を見つけるまで裁縫箱の中を探し続けるだろう。それがマキシマイザーだ。
#「私は失敗したのではなく、うまくいかない1万通りの方法を見つけだだけです」
#この発言は、システムの中ですべての変数を試すこと、そしてそれぞれの効果を追跡する必要性を完全に表している。これが、システム化のメカニズムの核心なのだ。
負け惜しみでは本当に、ないのだ。本当にリストアップされた1万項目を順番にテストして、リストの最終行を終えたことに満足しているのだ。
*オーストラリアのブラックカイト(別名ファイヤー・ホークス)は、山火事でくすぶっている枝を拾い上げ、離れた所まで運んで、それを乾いた草地に落とし、新しい火を起こす。日から野ネズミを逃げ出させ、高い枝から舞い降りて捕まえて食べるためだ。
MITの卒業生の子供に自閉症が多いのか、調査をしていた。「仮説が証明されれば、MITの名声に傷がつく恐れがあり、研究を認めることはできない」と学長から断るメールが来た。認めたも同然である。
#「似た者同士が惹かれ合うこと」を、生物学者は、「アソータティブ・メイティング(同類交配)」と呼んでいる。
そしてこの本の終わりにはこんな素敵な文章がある。
#すべての自閉症の人、そしてそのご家族に感謝を伝えたい。認知的共感が苦手でも、感情的な共感と論理への深い愛、そして公平と正義への強い信念を併せ持つ、むしろ他の人よりも道徳的である、という私たちが経験してきたことが、科学によって確認されたのだ。
『自閉症とマインド・ブラインドネス』に長文のレビューを書いた「読者」さんは何者なのか。
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