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2050 ショージくんのゴキゲン日記 東海林さだお

 神田@ワンダー。文春文庫(旧)177-3番。表紙は水割りらしきものを前に頬杖をついている筆者。

 「深夜のトラ狩り」では飲酒運転取締りを取材する。今なら許可が下りないだろう。「われは海の子」では合宿をしてみたいとヨットスクールに入るが、あまりの宿の惨めさに脱走してしまう。「風流雪見酒」では雪はどうでもよく、芸者さんが寝るか寝ないかに焦点が当てられる。「カンヅメ計画」では『ショージくんの青春記』を書くために旅館に入ったが、頭の中はつまみの缶詰ばかりである。

#民宿は朝が大変である。
#まずトイレが大変である。
#クソしざかりの青年が二十人もいるというのに、トイレは一つしかない。
#行列して順番を待つ。
#行列の最後の方になるとチリ紙がなくなり、新聞紙をちぎって代用する。
#新聞紙で尻を拭いたのは何年ぶりであろうか。
(われは海の子)

#中には、一人で気楽に酒場におもむき、絶え間なく談笑し、ホステスたちを笑わせ、大いにモテ、バーテンも笑わせ、ついでに出入りの酒屋にまでお世辞をつかい、「ゴッツォーサーン」などと陽気に挨拶して店を出てきて、「ああ、楽しかった」と叫ぶ人もいるが、こういう人は大抵バカである。
(酒は涙か溜息か)

#「妙案もなにも、もう一回入学試験を受けて、四年間学んで卒業すればいいんですよ」
#「あ! なるほど、しかしぼくももうトシだし、一発では大学入試は通らないだろうしねえ」
#「そしたら浪人して予備校へ通えばいいでしょう」
#「このトシで浪人ねえ。またたとえ受かったとしても、四年間の通学に耐えられるかどうか」
#「そうすると、また中退ということになりますな、ハハハ」
#この人は、人のことだと思って真剣に考えてはくれないのである。
(さよならワセダ)
 編集F氏がいい味を出している。

 「さよならワセダ」では中退した大学の卒業式に潜り込み、記念品のペナントや灰皿、湯呑みなどを買い込み、卒業式会場の椅子に黙って座ってしまう。

#冒頭に総長は、「諸君はまず、早稲田大学を卒業したという学歴を忘れなさい」と言った。「人間の尊厳と幸福のために、どのように働くか、ということが問題であるこの時期に、学歴がどうのこうのということは、問題外である」という趣旨の演説を行なった。
#せっかくぼくが学歴にこだわって、こうして苦しみながら卒業式に参列しているのに、総長はとんでもないことを言うのである。

 勝手に「参列」と言い切っている。
 角帽をかぶった著者の写真は貴重である。

 解説の青木雨彦さんは編集者に「雑文を書いてくれないか」と言われて悔しい思いをした。
#「雑誌に乗るから雑文じゃないの?」
*と、友人に嗤われた。そういうことならば、川端康成さんの『雪国』だって、志賀直哉さんの『暗夜行路』だって、みんな雑文ではないか!


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