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2091 マスクは踊る 東海林さだお

 M書店。文春文庫101番。

 表紙はマスクをかけながら内心「コノバーカ」と思っているいつもの男性。「カバー画」は東海林さだお。本文の挿絵とは異なる描き下ろしである。それとはべつに舌を出しているタンマ君の白黒イラストがあるのが珍しい。

 令和改元を前回と比べ、昭和の匂いを懐かしがり、朝風呂や散歩に言及するなど、年齢相応の話題が多い。電子レンジは「チン」とは言っていない、とはさすがの慧眼である。

#雨宿りという言葉、宿ってたんですよ。昭和の時代は、人んちの軒下に。
#学校からの帰宅時に俄か雨があるとお迎えというものがあった。
#いま「お迎え」は不吉な言葉であるが、昭和の時代のお迎えは嬉しくて楽しい学校の出来事だった。
(昭和の匂い)

 巻末のジェーン・スーの解説が、切れ味よい。
#キーボードを打ち始めて十年しか経っていない若輩者の暫定的な見解を記すのは気後れするが、勢いに任せて書くと、エッセイは「朝起きてご飯を食べて出かけて夜帰ってきて寝ました」を、どれだけ読むに堪えうる文章にできるかにかかっている。

 タンマ君傑作選を13編も挟んでいる。これも新しい趣向である。


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