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2108 看護助手のナナちゃん 3 野村知紗

 図書館より。小学館。

 ナナちゃんは看護助手。この本の主役はサナエさんと沢村さんである。
 サナエさんは2巻で、「元気になったら捨てた息子に会いたい」と前非を悔いて生き直すことを誓うが、拘縮して話すこともできなくなった。そのサナエさんが3巻で息子に会う。
「こんなんで生きてるって言えるんですか」と息子。
「一生懸命生きてます! 毎日必死で生きてると思います!!」
「俺にはわからん。自分で捨てといて弱ったら会いたいとか、勝手じゃん。」
#サナエさんの涙は止まらなかった。
 普通だったら最後に息子は前出の言葉を謝りながら親子で抱き合い涙を流すのが定番だが、この漫画ではそんな筋書きにはならない。市に火葬を頼み、永代供養のお寺に収めてもらった。

 沢村さんは口うるさい元看護師。看護師から避けられ、見舞いもない。ナナちゃんだけがぐいぐい近づいていく。
「好きな芸能人いますか?」
「なぎら健壱。」
#私が28歳の頃ね、患者さんと恋に落ちたんよ。二人でおる時間は楽しくて、優しくて、そのままずーっと一緒におれると思ったんよ。ある日、仕事から帰ったら、ご飯の支度がしてあって、彼は血を吐いて倒れとったん。病気が悪化しとったん、うちは看護師なのに気付かんかった。そのまま救急車で病院へ行って、3日して亡くなったん。
#あんたは健康な人と結婚するんよ。わしのことは忘れてください。ありがとう。
#忘れるわけないよね。あー、話せてよかった。

 その後沢村さんには元同僚が見舞いに来て、楽しい時を過ごす。昼ドラも趣味になった。

 沢村さんは厳しい看護師長だった。
#あんた、患者とおしゃべりするヒマがあったら、他にすることあるじゃろ!!

#ナナちゃんうちね、患者とのおしゃべりは怠慢だと思っとった。そういうのを大切にしとる子を、何人も潰してきたんだと思う。でも、それを求めとる患者もおるんよね。うちも今、そうだもん。おしゃべりが一番楽しいけえ。

 入院して初めてわかった。

#「できん」は自分の心次第よ。でもね、もがいてもできんことはある。こうなってやっとわかったんじゃ。それでもうちは、もがいてももがいていもやろうとすることが、やっぱり美しいと思うん。

#でもそのあと照れて、「まぁできんでもええよね」って言ってました。
#あんたも息、抜きんさい。
#私は抜けっぱなしですよー。

 そして一度だけ登場の木村さん。お酒が大好きで、友達との新年会を楽しみにしていた。「あんた、飲み過ぎたらいけんよ。」と妻。「おうっ、いってきまーす」と上機嫌でドアを閉めた。「あんなに楽しそうなの久しぶりじゃ。」
 その夜、木村さんは階段で足を滑らせて救急車で運ばれ、ICUで意識不明のまま亡くなった。「お父さんのバカーー! おっちょこちょいなんじゃけー…」と妻。
 …ビルの二階や三階にあるスナックに、緊張感を持つようになった。


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