73 短歌をよむ 俵万智
図書館より。岩波新書。
いい本だ。
「よむ」が平仮名になっているのは、「詠む」と「読む」の両方を意味している。
まず古典から引用し、大らかな愛や音の連続の技術を紹介する。これが「読む」。
続いては自分の作歌の方法を紹介する。これが「詠む」。俵さんはノートに記録しているので、途中経過がわかっておもしろい。
カレー味のからあげ君がおいしいと言った記念日六月七日
「カレー味がいいね」と君が言ったから今日はからあげ記念日とする
(カレー味却下、しお味、この味を経て、サラダになる。俵さんはS音が好きだ。日付も変わった。七夕では愛の歌とわかりすぎる。)
「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日
ドッグイアー。
#短歌は、一人称の文学と言われる。
#私の場合、何かでこぼこした感じのところをなくしたくて、推敲をする。(略)言葉のなめらかさが足りずに、リズムがぎくしゃくしている、という意味の「でこぼこ」。不自然な言葉が混ざっているために、そこだけがどうもしっくりしないという「でこぼこ」。あるいは、自分の表現したい心の揺れと、今ひとつぴったりせず、ズレを感じさせるという「でこぼこ」。いかにも凝った表現、というのが前面に出すぎて、読む人の重荷になってしまうような「でこぼこ」……。
もう一度、朱色の岩波新書を読める自分でありたいものである。
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