65 ロンドン塔 出口保夫
中公新書。副題、光と影の九百年。
最近は軽いのばかり読んでいるので、岩波とはいかなくてもこれくらい読まなくては、と反省。
いちおう英語専攻なので、イギリス史は何度か習った。それでもなかなか頭に入ってこない。とりあえず「アン・ブーリンという女性(本書ではブリン)に惚れた王が彼女を懐妊させ、カソリックから破門され、アングリカン(英国国教会)という独自の宗派を作った」という知識はなんとなくある。
そんなアン・ブーリン、トマス・モア、その他もろもろの歴史上の人物が幽閉され、そして処刑された場所。ロンドン塔。実は私は二度訪れている。華やかな宮殿、質素な塔、厳重に守られた王冠。
今の私の知識ではまだ十全に味わうことはできない。折りにふれ何回か読み返したい本である。書評になるには、まだまだ。
ドッグイアー。(*は要約。#は引用。)
*85ページにフランスの画家ドラローシュの「塔のふたりの王子」の白黒写真がある。落胆した兄エドワード王と励ますように寄りそう弟ヨーク公が印象的である。
#ジェーン・グレーの最後
「妃、これが最後です。悔い改めることはありませんか」(略)
「どうかお止めください」(略)「わたしはすべてに安らかな気持ちです。どうかこのまま死なせてください」(略)「そしてこれはあなたが受け取ってください」と、その手袋とリボンを外しながら(侍女アンジェラに)頼んだ。モーガンはしきたりに従い、(略)「わたしをどうかお許しください」と言った。
「わたしの首こそ」とジェーンは答える。
「わたしはあなたを心から許します。あなたはよい方です」
ジェーンは頭を台の上に乗せた。
「主よ、わが魂をあなたの御手にゆだねます」
それが彼女の最後の言葉だった。斧が振り下ろされ、これまで処刑人の手にかかった中でもっとも麗しく聡明な女性の首は落ちた
(この絵も傑作です。特にジェーンは目隠しをされているのに、絶世の美人に見える。処刑を命じたのがブラッディ・メアリー。)
#「兄は静かに書をふせて、かの小さき窓の方へ歩み寄りて外の面を見様とする。窓が高くて背が足りぬ。床几を持って来て其上につまだつ。百里をつつむ黒霧の奥にぼんやりと冬の日が写る。屠れる犬の生き血にて染め抜いた様である。兄は「今日も亦斯うして暮れるのか」と弟を顧みる」
(夏目漱石、『倫敦塔』より。兄と弟を取り違えている)
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