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2129 最新アイヌ学がわかる 佐々木史郎・北原モコットゥナシ

 図書館より。エイアンドエフブックス。

 アイヌ研究は今どうなっているのか。文化人類学、言語学、民俗学、施設ウポポイ、様々な見地から最新の情報を小出しした本。2024年のアイヌ学を一覧できる。

 パラダイムシフトは二つ。一つは、これまでのアイヌ学は非アイヌの研究者、言わば外部が研究していた。しかしこれからは当事者であるアイヌ本人がアイヌを研究するのだと宣言する。
 もう一つは、国際性。日本だけではなく、中国やロシア、ウイルタ、ニブフなどの民族との関係性も含めて包括的に研究していくという視点である。

#土地を所有する権利は、その土地を「効率的」に利用した者に認めるという考え方である。それは、つまるところ農地化のことであり、狩猟漁労採集を盛業とした先住民族は、その土地の所有者とみなされなかったのである。

#「農耕はよいことづくめ」と教えられてきたが、農耕のみに特化することには、メリットと相応のリスクもある。農耕は狩猟や漁労、採集、牧畜などとともに複数ある選択肢の一つであって、状況に応じて農耕から狩猟採集への転換もありえるし、複数の生業に依拠することも常に見られた。

#明は第三代の永楽帝のときに、宦官のイシハをアムール河下流域に派遣した。
 聞いたことがある。田中芳樹の『長江落日賦』だ。

#アイヌは文字文化に触れる機会も多くあったのだが普及はしなかったというのが実際の姿ではないだろうか。その理由としてはそもそも、初期の文字使用が階層化や徴税にともなう簿記的な事柄に終止していたことを考えれば、アイヌが営んできたのはそうした行為を必要としない社会であった(なお、獲物の数や日数の記録などは刻印や結縄、木偶を用いて行った例がある)。
 家族で暮らしている分には、文字は必要ない。

#なぜ多くの多数は日本人にとって「和人」という呼称がなじみが薄いのかといえば、「マジョリティは名前を持たない」からである。少数派は常日頃「自分は何者か」を意識せざるをえないのに対し、多数派はそれを意識しなくて生活できるという特権がある。

*人種差別の実験授業。100m走をすると言って子供たちをスタートラインに並ばせる。
*「両親が英語母語話者である子は、一歩前に進みなさい」
*「自分の町にいながら、同じ人種の子がいない瞬間を経験した子は、一歩下がりなさい」
*「地元にいて、いつも出身地を聞かれる子は、一歩下がりなさい」
*「警察官を見かけたときに、家族が職務質問をされる心配をしたことがない子は、一歩下がりなさい」
*「家族に差別に気をつけろと言われたことがある子は、一歩下がりなさい」
*ヨーロッパ系の子はパニックになり不快をあらわにし「何が言いたいんだ? そんなこと考えるわけがない!」
*しかし、アジア・アフリカ系の子は、静かだ。
 それが日常だから。


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