95 字幕の中に人生 戸田奈津子
図書館より。白水社。
おもしろい! びっくりマークをつけてしまうほどだ。構成もいい。まず一章で日本における字幕の立ち位置を概観し、二章で仕事に就くまでの経歴に触れる。三章は字幕翻訳の実際。四章は名台詞、名字幕。完璧である。
字幕翻訳の個々の技術には触れない、としながらも、流れるように出てくる現物の数々。貴重である。下記、引用や要約が多いことで、私の関心の高さがわかるであろう。
*「(部屋が)殺風景ね」と言われて"Less to miss." これを「そこがいい」と訳す。
*"Hit the air!"は、「宙を撃て」ではなく、「逃げろ」。
#「キューブリックは字幕翻訳の逆翻訳を要求する。バカげたことをなさる大先生だ」(高瀬鎮夫) 根本的な言語の違いを考慮に入れず、逆翻訳の文字づらだけを見て、満足のゆくはずはない。
*字幕を読みきれなければ何度も見ればよいと言った批評家がいたが、タダで試写を見られる批評家と一般観客は違う。
#字幕はチラッと目を走らせただけで、なんなく内容のつかめる文章でなければならない。
#二行二十字
*一秒に三、四文字
*新聞並みに当用漢字を遵守して、「僕」は使うが「俺」は使わない。
#出だしのせりふは字数を抑え加減にする。
#「ドクター・ペッパー」で(飲み物だと知らなくて)悩んだことがある。
#「オス、メスが違っていましたよ」(男なら「映画は好きでしょ?」でなく「映画は好きかい?」と言わせた方が誤解がない)
#「ガイトーがあるので、ボンドで見てください」(法令違反に該当する部分があったので、税関に保税状態にされているものを試写の特別許可をもらって見てください)
#「ここからここまでが一つの字幕ですよ」という区切りを、原文のシナリオに記してゆく(のを、「箱書き」という。)
#"Go!"が「行け!」か「逃げろ!」かは、画面を見なくてはわからない。
*ヒアリングはネイティブにしてもらう。(昔は自分でやったこともある)
*ターザンもウディ・アレン作品もギャラは同じ。
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