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2137 人とカラスの知恵比べ 塚原直樹

 図書館より。化学同人DOJIN選書。副題、生理・生態から考えたカラス対策マニュアル。

 著者は杉田昭栄先生の弟子。師匠の時代からカラス対策はどのように進化しているのか。
 キーワードは「カカシ効果」である。カカシでもCDでも、なにかを設置すると、カラスは「今まで見たことがない変なものがあるぞ」と警戒して近寄らない。ここで素人は「○○を置いたらカラスが来なくなった」と自慢する。しかししばらくしてカラスが「あれは危険なものではないぞ」と認識するとその効果はなくなる。
 だから警戒させるタイプのカラス対策は、定期的に変化させるか、果物の収穫期など時期を限定して行なうか、でなければならない。警戒させないタイプのカラス対策は、ネットでおおったり、ワイヤーを垂らして飛ぶのを妨害したりすることだ。

*ねぐらと巣を混同される方がよくいるので、ここで説明しておこう。ねぐらとは、寝る場所である。一方、巣は繁殖を行なうことを目的としている。巣では卵を産み、子育てを行なう。二月ごろから七月ごろの出来事である。
 私と同じく「行なう」表記の人だ。

#カカシのように、目新しいものにカラスが警戒し、一時的に近付かなく効果を、私は「カカシ効果」と呼んでいる。

*鳥類はカプサイシンに対する感受性が低いことが電気生理学的実験からわかっている。これは唐辛子と鳥類との共進化と考えられている。鳥類は唐辛子の辛みを感じなくなることで、その実を栄養源にできる競争相手が減るという利点があるだろう。一方、唐辛子としては、鳥類は哺乳類のように歯で実を擦り潰すことなく丸呑みし、さらには遠くまで種を運んでくれるため、鳥類に食べられることに利点がある。

#よく、カラスの死体を見ないのはなぜか、という質問をいただくことがある。これは、あまり人が立ち入らないねぐら近くなどの場所で死んでいることが多いからなのかもしれない。カラスが共食いをするでの、ねぐら近くであれば、ほかのカラスの食べ物になるだろう。

 11月に愛知県で実験を行なった。ドッグフードの近くにポリタンクやCDなどの新奇物を置いた。早くて一時間弱、長くても26時間しかもたなかった。
#では、先の試験において、「カカシ効果」が長続きしなかったのはなぜだろうか。ひとつは、時期の問題があるだろう。冬になるとカラスの食べ物は極端に少なくなる。そこで、簡単に栄養価の高い食べ物が手に入る餌場は、カラスにとってはとても魅力的なはずだ。

*実は先のリンゴ園のカイトの話だが(カイトでカラスが来なくなった)、その効果が話題となり、翌年にはどの地域のほとんどのリンゴ園がカイトを導入したそうだが、その結果、地域全体でのカイトの効果がなくなったという。これはまさに、選択肢がなくなったために「カカシ効果」がなくなった例と言えるだろう。

 カラスは人の後頭部を狙ってくる。危険を感じたら、傘や帽子で守ることが大切である。
#同様に翼が当たることを利用した対策として、バンザイポーズがある。
#両腕を挙げてバンザイポーズをとりながら通過することで、カラスは翼が人の頭に当たるのではと思い、威嚇行動をためらわせるのがねらいだ。


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