2136 まちがいだらけの少子化対策 天野馨南子
図書館より。金融財政事情研究会。副題、激減する婚姻数になぜ向き合わないのか。
「東京に出会いはない」「若い人たちは男性が働いて女性が専業主婦になるスタイルを望んでいる」などの、誤った先入観をアンコンシャス・バイアスと呼ぶ。それを廃してエビデンスに基づいた政策決定をしていこうと主張する。
読むだけで統計の勉強になるし、きびきびとした筆致が心地よい。
#出生率は、その時代に生きる「全女性」が、結婚の有無に関係なく、生涯に持つであろう1人あたりの子どもの数を表す予想平均値、つまり女性1人当たりの持つ子どもの数の指標である。
「夫婦が持つ子どもの数」ではないのだ。
多くの夫婦が子供を二人、三人産んでも、独身女性が多ければ出生率は下がる。
#確証バイアスとは、いいたいことをいうために都合のよいデータだけを用いて説明をする、あるいは背後にあるデータに迫ることなく結論づけるといった行為を指す。
#現在50代以上の男女が最も理想としてた夫婦像が、今では最も理想とされない夫婦像へと変化しているのである。
「専業主婦コース」「両立コース(夫婦ともに働く)」「再就職コース(妻は出産・育児で一度退職し、子どもが成長したら再就職する)」の三つのうち、高齢者は「若い人たちも専業主婦コースを望んでいるのだろう」と(勝手に)思っているが、実際は若い人たちは「両立コースがいい」と思っているのだ。
出生率は「出生数÷(既婚女性の数+未婚女性の数)」で導かれる。若い未婚女性が田舎から出て行ってしまうと、分母が小さくなるので、出生率は一時的に上昇する。ただし、将来子どもを産む未婚女性がいなくなるので、結果的に子どもは生まれなくなる。都道府県で出生率を比較してはいけない。
#女性の仕事を観光・宿泊・飲食(笑顔の仕事)、介護・看護・保育(お世話の仕事)という「2大ママ延長線職」に縛りつけるのは、地方に出張していて非常によく出会う考え方である。
女性もプログラマや営業の仕事をしたい。
10歳刻みで世代別人口構造を比較する。全国平均で最も多いのは40代、続いて50代。秋田県で最も多いのは60代、続いて70代。
*秋田県は価値観が20年遅れている
講演前後によく聞く悩み。
#中高年男性が「子どもが欲しいから」という理由で20代女性を希望する、しかも、その親も含めて、若い女性を中高年男性に紹介できて当たり前だという態度で手に負えない、という悩みである。
#中高年人口の親は、大半が70代以上で、第2次世界大戦の影響を色濃く受ける人々である。日本は本土戦をほぼ逃れたことにより、海外の戦地に赴いた男性の人口喪失が大きかった。つまり、「女性余りな状況での結婚」経験者たちである。
#実は、「晩婚化」というのは、「結婚適齢期が上昇した」という話ではなく、「かつてはなかったような(統計的外れ値の)高齢者の結婚が発生するようになり、平均値を吊り上げている」という解釈がより正しいといえるだろう。
初婚同士結婚における男性の年齢のピーク値は、27歳である。
#若い世代ではもはや4大卒は男女ともに珍しくなくなったが、中高年にとっては「4大卒は高学歴であり、女性からもある程度はリスペクトされる学歴かも」という思い込みがあり、学歴に対する価値観が若い世代とはかみ合わなくなっている。
4年制大学の男女の進学率は、1971年で30.3%と8.0%と差が開いていたが、1991年で34.5%と16.1%、2022年で59.7%と53.4%と、ともに上昇し、男女の差もなくなっている。
#自己PR欄では、男性は自分の自慢したいこと、女性は自分の趣味や関心事を羅列する傾向がある。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 158 コンピュータは名人を超えられるか 飯田弘之(2025.11.14)
- 157 フォークの歯はなぜ四本になったか ヘンリー・ペトロスキー(2025.11.13)
- 2145 子供が自然と集中する学習空間のつくり方 米田まりな(2025.11.13)
- 156 星空の400年 ホバート・シーリング ラース・リンドバーグ・クリステンセン(2025.11.12)
- 155 体が目覚めるストレッチメニュー 荒川裕志(2025.11.11)



コメント