カテゴリー「書籍・雑誌」の1000件の記事

1373 村上春樹は、むずかしい 加藤典洋

 図書館より。岩波新書。

 村上春樹は文壇とは距離を置いていることは有名であるが、批評家の中で唯一と言っていいほど村上のデビューから熱く支持しているのがこの著者だと言っても過言ではないであろう。

 様々な発見を得られる本であるが、最大のポイントはこれだ。
 日本文学はこれまでの「否定」をテーマにしてきた。村上ワールドは「否定性」を否定し、「肯定性」を明るく肯定しているのだ。
 その象徴的な台詞は、「気分がよくって何が悪い?」だ。

#サザンオールスターズの桑田佳祐が証明したのは簡単にいえば「否定性」などなくてもよい音学は作れるということだ。桑田は「たぶん気付いていないかも知れない」がサザンは、そのことをはじめて証しだてた。その点で彼らは「すごいバンド」なのだ。
 村上龍。

*彼は、恋人の「すみれ」(花)を失うが子供ほどの年齢の「にんじん」(根)に助けられるのである。

 『アンダーグラウンド』で多数の市井の人々を取材した経験は、登場人物のレパートリーを広げた。
#彼らはすべてこの『アンダーグラウンド』を契機に、村上の小説世界のなかに参入することになった、それまでけっして村上の小説で主要な役割をふられることのなかった新顔たちである。
 新顔とは、『かえるくん』の片桐、『カフカ』の星野青年、『1Q84』の牛河たちである。

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1372 世界の国名地名うんちく大全 八幡和郎

 図書館より。平凡社新書。

 世界各国の地名のうんちくを徹底的に語り倒す。特に発音と翻訳にこだわりがあって面白い。「共和国」を意味する英語表記では同じなのに翻訳すると異なるとか。

#首都ベルンの語源は「熊」である。
 ベルンとベア、似ている。

#「三つの都市」を意味するトリポリは英語で、アラビア語ではタラーブルスである。

#漁業資源が豊富で、日本もタコなどを輸入している。冷えても固くならず、大阪のたこ焼きやサラダには国産より好ましい。
 モーリタニアのタコはうまい。

#首都スーバもあるビティレブ島がもっとも大きな島で、この島の名前を英国人が聞き違えてフィジーとなったらしい(今もフィジー語ではビティである)。

#半島の形がライオンに似ていることから、セラ(背)・デ・リオア(ライオン)と呼んだことに由来する。それを、スペイン語に翻訳するときに「セラ」を「山」という意味と勘違いしてシエラと呼び、それが英語名にもなったようだ。

#ジャック・カルティエという人がいて、1535年にセント・ローレンス川を遡って航行しているとき、インディアンになんという場所なのかを聞いたところ、「俺たちのカナダ(村)だ」といったという。

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1371 amazonのすごいマネジメント 太田理加・小西みさお

 図書館より。宝島社。

 「すべての社員がリーダーである」ことを軸に、「質問」を大事にし、人材を育てることに時間をかける。上司は常に「自分の後任を育てる」ことを考えているのが新鮮である。

*テネッツ; 新しくプロジェクトを始める際に、どのような指針に則って勧めていくかを定めたもの。
 ディスカッションが変な方向に行ってしまったときは、「テネッツとは違うんじゃないの?」の一言でぶれないで済む。

#言語化することがいちばんフェアである
 パワーポイント禁止。

*目標設定のSMART
*S pecific 具体性
*M easurable 測定可能
*A chievable 達成可能
*R elevant 関連性; 目標が自分の部署や企業の目標に関連しているか。
* Time-bound 期限

#相手の話をしっかり聞き、不明なところは1つひとつ質問でクリアにし、自分の中に落とし込む。最後には必ず「なるほど。話はわかった。それであなたはどうしたい?」

*上司の研修で「あなたの部下は何を一番大事だと考え、求めていますか」と質問されたことがあります。参加者の多くは「やりがい」と答えていましたが、担当者の答えは違いました。「安心・安全」でした。

*(謝罪で)上司が「部下が迷惑をかけまして」と言ってはいけません。この発言は、上司が部下を突き放しているともとれ、部下の不信感を買ってしまいます。先方に対しては、「部下が勝手にやったことなので、自分に責任はありません」という弁解にも聞こえてしまいます。

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1370 YouTuberの教科書 大須賀淳

 図書館より。インプレス。副題、視聴者がグングン増える!撮影・編集・運営テクニック。

 タイトル通りユーチューバーに求められるスキルやソフト、資材を紹介した一冊。自分たちが実際に使っている機器を語っているので実用的性は完璧である。

*場所を移動する場合; 映像よりもワンテンポ早く、音のクロスフェードを始めましょう。なお、映像が暗転(フェードアウト)するときは、画面が暗転しても若干音を残すぐらいが、余韻を残す効果を演出できるのでおすすめです。

*「ラノベPOP」 
*往年のクイズ番組をモチーフにした「チェックポイント★リベンジ

Adobe Color
*イメージや好きな色から、最適な色の組み合わせを生成する無料のwebサービス。

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1369 日々是口実 土屋賢二

 図書館より。文春文庫。

 表紙イラストはヨシタケシンスケ。「ゲームを買うとやせるらしい」と子供が母親を説得しようとしている。

 今回一番心に残ったことは、土屋先生は定年で退職されたということだ。イギリス時代のフィッシュアンドチップスを回顧したり、奥様と弟とトランプ旅行に行ったり、と新しい趣が見られる。

#でも最近はスマホをかざすだけで……
#そんなにスマホをかざしたいなら、そこらへんでスマホをかざせばいいでしょう?

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1368 村上春樹の秘密 柘植光彦

 図書館より。アスキー新書。副題、ゼロからわかる作品と人生。

 副題のとおり、作品論と作家像をバランスよく織り交ぜ、多少のオヤジギャグを入れた佳品。
 村上作品に共通することは何なのか、複数の作品を串刺しする視点が知的好奇心をかきたてる。

#「ピーター」は三鷹時代に、春樹が夏休み等に帰省して留守のときには、アパートの外で鳥やモグラの子供をとって食べたり、どこかの家の台所から食べ物をかっぱらったりしながら「自活」して、春樹が戻るとまた飼い猫になるという「野良猫体験」のある自立した猫だった。
#しかし文京区では、この体験が裏目に出た。
#「ピーターは最後まで都会生活になじむことができなかった。いちばん困ったのはあたりの商店からのべつまくなしモノをかっぱらってくることだった」
 ピーターは病気になって知り合いに預けられ、そのままいなくなってしまった。

#「団塊の世代」の多くは一九四八年ネズミ年生まれなので、「鼠」という名前は「団塊の世代」を代表している。

#春樹は『蜂蜜パイ」という短編小説で、こうした三角関係を上手に解決している。
 「こうした」とは「夏目漱石風の」なのか「個人的出来事と明治の精神をこじつけた」という意味なのかは判然としない。

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1367 風流江戸雀 杉浦日向子

 図書館より。小池書院。

 コメディー『お江戸でござる』の江戸時代に詳しいお姉さん、としか知らなかったが、なんと漫画家だったとは。絵師と言うべきか。

 「女房の留守も中々おつなもの」がいい。奥さんが妹の出産で実家へ帰っているので、悪友に誘われて吉原へ。雀がチュンチュンと鳴くなかそうっと帰ってくる。キョロキョロするが奥さんがいないことを思い出し、「なあんだソウだっけ。」 「朝帰り首尾の良いのもへんなもの」

 シンプルだが子供のいる母親の丸みを帯びた体の線なんて絶品である。

 『「お茶っぴい」さん』と題した巻末随想で宮部みゆきはこう述べている。
#日向子先生はなくなったのではなく、ただこの世を去られただけだと思います。ではどこに行かれたかと云えば、もちろん、江戸の町です

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1366 SDGsがひらくビジネス新時代 竹下隆一郎

 図書館より。ちくま新書。

 著者はもとハフィントンポストの編集長。モノがない時代はモノを作れば売れた。今はモノが有り余るほどある。消費者はモノの背後にあるストーリーを見て商品を選択する。作る過程で環境に配慮しているか。原産地では人権侵害がないか。企業のトップは女性差別の発言をしていないか。

#日本のビジネスパーソンが自己紹介をするとき、「大阪支店長を拝命しまして」と言ったり、「突然、マーケティングを担当しろ、と上から言われまして」と口にしたりする。私はそのような言葉を絶対言わない人生を送ろうと決めてきた。あくまで「自分がやりたいからこの仕事をやっている」と心のなかで“腹落ち”するまで、働く意義を突きつめて考えてきた。

#SDGsに取り組むということは、様々な社会問題が抱える矛盾と向き合うことを意味する。
 例えばクーデターが起きたミャンマーで企業はビジネスを続けていいのか。

*グーグル本社を訪ねたことがあるが、人気スポットはグーグルのロゴマークが入ったTシャツやマグカップを売っている社内土産物店だった。日本の会社員が「ソニー」とか「日立」とか「東芝」などのロゴ入りTシャツを着ていたら、私はギョッとして目を疑うだろう。

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1365 子どもの心が見えてくる 佐々木正美

 図書館より。ゆいぽおと。副題、エリクソンに学ぶ。

 エリクソンは算数を例えに、子供の成長には順番があってそれは逆にできないという。数を知らない子供が掛け算ができないように、首がすわらない子供がはいはいをできるわけがない。赤ちゃんのころ養育者に絶対的に信じられたから、幼児になって我慢ができるようになる。
 エリクソンの弟子から教えを受け、エリクソンの研究に生涯を捧げた著者の言葉を仲間がまとめた本。だから話の重複もあるが、それでも言葉を次代に語り継ぎたいという静かな熱気を感じる。

#活き活きした相互関係というのは、双方とも、防衛的な態度がなくて済む状態です。「こんなことをしたら嫌われるかな」「こんなことをしたら叱られるかな」という不安がない状態です。

#エーリヒ=フロムは、人間のあらゆる努力は社会的孤立を避けるためにあると言いました。

#ロバート=エムディは、生後六ヶ月から一歳半ないし二歳くらいまでの間の育児の仕方が、将来社会的なルールを守って行動できる人になれるかどうかをほぼ決定づける。それほど感受性が重要な時期だと言っています。
#胎児期の九か月を含めて三三か月――生まれたあとの最初の二年で、ほとんど決定的に決まっていると言っています。

#「すぐにできるようにならなくてもいいんだよ」というメッセージを伝えながら、大切なことをコツコツ繰り返し教えてあげることです。「ちゃんとできるようになるまでいつまでも待っていてあげるから」「何回でも教えてあげるから」。

#こちらがコントロールするのではないのです。それは他律です。親の前でよい子で保育園で手のやける子どもというのは、他からコントロールされている、自律性が最もない子です。
#自分は育児が上手だからいい子にしているが、保育園は保育が下手だから難しい子になる、こういうふうに思う親がいるのです。

*学生が自転車置き場に自転車を置かないことが問題になっています。もっと自分にとって便利なところに置こうとする。人には迷惑です。そんな簡単なことができないのです。でもそういう学生を単純に叱る気はしないのです。他者への配慮がないということは、自分への配慮を十分得てこなかったということなのですから。

#ある暴走族の少年たちに「鈴鹿サーキットを開放してくれたら、思いっきり走ってみますか?」ときいたことがあります。彼らは「観客がいたら走る」と答えました。
#「こっち見て行動」なのです。
#しかめ面でもいいのです。顔を向けてくれることが大切なのです。
#人間というのは、屈折した人間関係でも、なくては生きていかれないのです。

#かつて、家族があった時代は、子どもたちはままごと遊びが上手でした。そしておかあさん役が花形でした。みんながしたがるので、おかあさん役を選ぶのは大変でした。
#ところが、今はみんなおかあさん役を嫌がるのだそうです。
#それならおとうさん役かというと、お父さんはとっくの昔にいないのです。
#おかあさん役は、やり方はわかるけれども嫌なのです。無理におかあさん役をさせると、命令ばかりしているそうです。
#ではどんな役をやりたがるのかというと、ペットなのだそうです。

#恋愛というのは人を愛する行為なんかではないのです、原則は。愛されたいという感情から始まるのです。

#人を豊かに信頼でき、自分を信じることができるから、子どもは自分で自分の衝動をコントロールできるようになるのです。

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1364 どもる体 伊藤亜紗

 図書館より。医学書院。

 「どもり」をテーマに、体と心の関係性を探る。
 どもりは特に「か行」や「た行」の破裂音で起こりやすい。体が言うことを聞かなくなって「ちちちち…」と音が連続するのが連発。連発を防ぐために勝手に音が出なくなってしまうのが難発。エラーを防ぐ工夫が症状になってしまう。またどもりを防ぐために「3単語先を読んで」どもりそうな言葉を「言い換え」することもある。コップの代わりにグラスと言う。ディズニーシーの代わりに「ナントカシーでお酒が飲めるところ」「ああ、ディズニーシーね」「そのナントカシーで…」と相手に言ってもらう方法もある。言い換えには「飛行機=航空機」のような類語辞典パターンのほかに、「利き手」の代わりに「ふだん使っている方の手」という意味を開く国語辞典パターンもある。
 どもらない場合もある。ほぼ全員が「独り言を言うとき」と「歌うとき」を挙げた。ほかに「演じているとき」を挙げる人も多い。人間関係も影響しているのだ。
 机をこつこつ叩いたり、人に「タン・タン・タン」と言ってもらったりすると言葉が出る時がある。しかしそれを「リズムに乗っ取られる」と嫌がる人も多い。

#誰もが経験しているとおり、会話とは、小刻みな話者交代(turn-talking)の連続です。会話は、複数の話者による「会話を持続させるという共同作業」にほかなりません。会話に参加する人は、ひとつの大きな流れの中にあり、それを乱さないように振る舞わなくてはならない。

 日本語はきれいだが、「継起性」や「あわい」なんて難しい単語が解説抜きで出てくる。「あわい」なんてほかに内田樹が使っているところしか見たことがない。身体性の研究ではよくあることなのか。

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